株の売却、2次相続まで考えないと損! 100万円以上も税が増える“カン違い”

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■相続すれば取得費はリセットされる?

前回、金融資産は相続があっても、元の取得者(被相続人)の取得費を引き継ぐとお話ししました。後でご覧ください。

そこで、こういう疑問がありませんでしたか?

「それなら1回でも相続すれば、取得費がリセットされる?」

――答えは、NO. 取得費は「相続時の時価」に書き換わらず、亡くなった方が「購入した時の価格」がそのままずっと引き継がれます。

例えば夫(被相続人)が生前取得した株を、妻が相続した。相続後これを売却すると、売却益は「譲渡額から夫の取得費を差し引く」

これは2次相続以降でも同じだということです。これがNISA口座なら違いますが、今回は特定口座など課税口座での話です。

そこで、2次相続が問題になります。これは子の問題にも関わってきます。

 

■税金が減る事例

先ほどの疑問は、「取得費加算の特例」の話につながります。

取得費加算の特例とは、相続時に払った税額を相続開始から一定期間(310カ月以内)に売却すると、その税額を取得費に加算できるというものです。つまり、その分、譲渡益を圧縮できる、税金も安くなる、ということになります。

そこで、2つの誤解があります。

   1回相続してそのまま持ち続けると、2回目の相続では「取得費は相続税評価額にリセットされる」。さらに、

   1回でも相続税を払ったら、その税額が「いつでも取得費に加算される」 。

では、これらの誤解を解くために、事例で見ていきましょう。

ここではシンプル化して金融資産のみの相続財産とします。なお、詳細な計算過程は省略します。

●共通前提

  • 相続財産:株1億円(金融資産のみ)  取得時5000万円
  • 相続人:妻と子1
  • 相続後:値上がり(2次相続時に1億1000万円売却時に1億2000万円)

結論を先に言います。誤解なく行けば、資産規模によっては相続後の対策で税金が数百万円も減ります。

 

■パターンA(対策なし) 

では、見てみましょう。金額はポイントだけ言います。

1次相続

  • 遺産:1億円
  • 基礎控除:4200万円
  • 課税対象:5800万円(1億円-4200万円)
  • 相続税: 子 385万円(配偶者は税額軽減でゼロ) 

2次相続(子)

  • 遺産:母の株5500万円(値上がり)
  • 基礎控除:3600万円
  • 課税対象:1900万円(5500万円-3600万円)
  • 相続税235万円

4年後売却

  • 取得費加算なし(母の株+子の株とも相続から3年10カ月以上経過
  • 譲渡所得税:約1400万円(1億2000万円-5000万円)×20

合計税額:2020万円385+235+1400

 

■パターンB(対策あり)

次は取得費加算の特例を使った対策です。表の左はパターンAで何もしなかった場合です。

●1次相続

  • 相続税:子 385万円(配偶者は税額軽減でゼロ) 

2次相続

  • 遺産:母の株5500万円(値上がり)
  • 基礎控除:3600万円
  • 課税対象:1900万円(5500万円-3600万円)
  • 相続税:約235万円

ここまでは、パターンAと同じです。

売却(子の株)・・・1次相続の1年後

  • 子:譲渡所得税:{6000万円-(5000万円×1/2+385万円)}×約20%(復興特別所得税は考慮外)

・・・1次相続税385万円を取得費に足すことで課税される利益が減り、税金約623万円

  • 母:保有を継続

売却(母の株)・・・2次相続1年後

  • 子:譲渡所得税:{6000万円-(取得費5000万円×1/2+相続税235万円)}×20

・・・(2次相続税235万円を取得費に加算して税金約653万円)

合計税額 1896万円(385+623+235+653

ABの差・・・・約124万円

取得費加算で増えるのは、子と母で620万円分(385+235。この分だけ課税額が圧縮され、節税効果となります。

今回のケースはシンプルな事例で約124万円の差です。でもこれが、相続税額がもっと大きくなるケース――例えば資産規模が大きい場合や不動産が多い場合には、この差が数百万円から1000万円単位にも広がることもあります。

 

■カン違いの整理

取得費については、かなり多くの人が勘違いしています。ここで整理しておきます。

●相続しても、その証券が買われた時の価格は変わらない

――被相続人が買った時の取得費が相続人にも引き継がれます。つまり、含み益もそのまま引き継がれるのです。

1次相続の税額は、2次相続で取得費加算に使えない

――これ、かなり間違いやすいです。取得費加算の特例は2次相続まで引っ張れるか?」という問題ですね。基本的に引っ張れません。取得費加算には制限があるのです。

  「その相続で払った相続税」を
「その相続で取得した人」が
「一定期間内に売却した場合」に限る

相続開始から310カ月以内(相続税申告期限から3年以内)。これが一番の落とし穴です。ここでよくある会話。

「まだ上がりそうだから売らない」

「どうせ売るときは、まだ特例が使えるでしょ」

――これ、両方マズいです。

期限内に使わなければ損。先ほど事例で見た通りです。

1つ加えると、購入時の価格が不明な場合、税務上は譲渡価格の5%相当額を取得費とみなすことができます。

でも、これって、95%が売却益となって、かなりの税金になりますよね。事例のように5000万円で買った株が1億円になった時、5%だと500万円が取得費。残り9500万円に課税されます。

 

戦略的保有を考える

それじゃあ、株高の時は、どうすればいいのか。すでに相続して財産をもらった例で考えてみましょう。

●配偶者(母)→2次相続まで保有し、子が特例を生かす

・配偶者は税額軽減があるので特例は使えない(母は税金を払っていない)

●子→売却が有利になりやすい(1次、2次相続とも言える)

・含み益が大きくても取得費加算特例の効果が大きい。

つまり、こうなります。

子は2次相続時の相続税を使って、取得費加算の特例が使えます。

誤解しやすいのは、子が1次相続時の相続税を使って、2次相続でも特例が使える、というカン違い。先ほど見ましたね。

1次の相続税を「取得費に乗せる権利」は2次では消える。ここ、かなり重要です。

 

■まとめ

金融資産の相続では、1回目相続で課税、2回目相続で課税、売却で課税

つまり、何の対策もなく持っているだけでは、課税が積み上がるだけです。

今回のまとめはシンプルです。

  • 「相続税評価額が取得費になる」
  • 「2次相続で取得費が切り替わる」
  • 「相続税を払ったらいつでも取得費に足せる」

混乱しやすいですね。
「取得費は原価の話、相続税は時価の話」と理解しておきましょう。

相続は、もらうだけの話ではありません。いつ動かすかを決める話でもあるのですね。

最後に大事なことです。「親がいくらで買ったか分からない」という悩みがあります。特定口座なら証券会社に記録があるので確認してください。一般口座の場合は、古い顧客勘定元帳を遡る必要がありますので、生前に確認しておきましょう。

途中でも触れましたが、NISAは相続時に時価で取得した扱いになります。つまり、「NISA相続税対策ではなく、譲渡税対策」なのです。

なお、「相続で面倒なこと考えたくないから生前贈与する」という考え方もあるでしょう。これは、別のテーマで配信したいと思います。

2026.05

 

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