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住民税非課税の“壁”とは? 留まるか超えるか―境界線での損得は

住民税非課税世帯の境界線、気になりますよね。

非課税維持のために収入を抑えるのは正しいか? 実際、迷っている方もいると思います。

でも、境界線を超えたら、違う面も見えてくるかもしれません。

「非課税の壁」に捉われてしまうと、それが見えにくくなっているのか?

今日は、その「壁」の向こうを見てみましょう。

 

■ 非課税世帯の軽減措置

住民税非課税世帯を超えた場合の対策はあるのか。それを考えてみたいと思います。

住民税非課税世帯になると、いろいろな減免措置や給付金があり優遇される。逆にそれを1ミリ(1円)でも超えると急に負担が増える。

そこで、おさらいとしてそれら優遇策にはどんなものがあるか。自治体により差がありますが、50代、60代に限って全国的に共通するものを一覧で見てみましょう。

【毎年恩恵がある】もの

・住民税ゼロ

・介護保険料軽減

・医療保険料軽減

・年金生活者支援給付金

【病気や介護の時】にあるもの

・高額療養費

・介護サービス軽減

・施設入所軽減

これについては、こちらの動画も参考にしてください。

高年令層向けでは、病気や介護になった時の平常時以外のものが多くあります。

当り前ですね。高齢者になれば病気や介護が増える。だから優遇策があるのです。

 

3 住民税が非課税になる年金収入の目安

対策を考える前に住民税非課税の境界ラインを見ておきます。

都心部における年金受給夫婦の場合です。

 

●住民税が非課税になる年金収入の目安

65歳以上

・単身世帯(本人のみ): 年額 155万円以下(月額約129000円)

・夫婦世帯(2人とも65歳以上): ①世帯主の年金が 211万円以下

                        ②配偶者の年金が 155万円以下

65歳未満

      単身世帯: 年額 105万円以下

      夫婦世帯:は表のとおりです。

           ③世帯主の年金が 1713000円以下

           ④配偶者の年金が 105万円以下

65歳以上は公的年金等控除が110万円ですが、65歳未満は60万円の計算となるため基準が低くなります。

 

■ 夫婦合算で366万円まで非課税

これを見て「おや?」と思われた方いらっしゃいませんか? 

例えば65歳以上の夫婦世帯では

①211万円以下、②155万円以下で、なるほど単独でこの収入なら非課税と納得されるでしょう。

しかし、ここで混同されている方もいらっしゃいます。

①と②を満たし、かつ夫婦合計で年金収入が211万円以下であれば非課税世帯になる、と。

じつはこれ、「①211万円以下かつ②155万円以下」であれば、

世帯全体で366万円以下ならば住民税非課税になる可能性が高い。

「え? そんなにもらっても非課税?」

――そう思いますよね。現役世代の夫婦で年収366万円なら、税金・社会保険料払った上で、特に軽減措置もなく働いている。実際、この非課税上限設定については、課税世帯から疑問の声も上がっています。

もっとも、実際には低額収入での非課税世帯の方が圧倒的に多い。それは夫婦の年金平均額が月額23~27万円ということでもわかります。

 

■ 非課税になるために年金繰上げして収入を減らす-1

今回の話題は、現状で非課税世帯の境界ラインにいる方が、もっと収入を増やせる方法はないか、ということです。そこでいくつか挙げてみます。

●繰上げ受給

「非課税になるために年金を繰上げ受給する」

――確かに65歳より手前に繰り上げすることで、年金額は減り、収入が下がります。

例えば60歳単身者のAさん。年金定期便により65歳でもらえる受給予定額が156万円と知りました。この金額では現行、受給年に非課税ラインをギリギリ超えています。

それなら、5年繰り上げて60歳でもらえば24%減額で1185600円となります。

これによって155万円以下となり、今年、つまり60歳時点で非課税になる。Aさんはそう考えました。

――これ、正しいでしょうか?

 

■ 非課税になるために年金繰上げして収入を減らす-2

確かに65歳受給基準に当てはめれば155万円以下なので非課税に思えます。でも、これちょっと危険です。

Aさんは実際には60歳でもらうので、60歳基準に当てはめると非課税基準は105万円以下なので、1185600円では非課税にならないのです。

1185600円から65歳未満の公的年金等控除60万円を差し引くと、非課税基準所得は45万円を超え、非課税の枠から外れます。収入を減らすために年金を繰り上げる方法は、この点に十分な注意が必要です。

また、年金以外に「給与」などほかの所得があると、年金収入単体ではなく「合計所得金額」で判定されるため、非課税ラインを超えるリスクがあります。

さらに大事なことは、仮に繰り上げして非課税になったとしても、減額された年金額が一生続きます。

 

■ 非課税にならないための秘策? 繰下げ受給

「繰上げでダメなら、繰り下げて70歳まで年金をもらわない」

――確かに、繰下げ期間中に年金収入がなければ、非課税世帯になる可能性はあります。

●繰下げ受給

Bさん。65歳の単身者で年金のみの収入です。住民税非課税ラインの155万円を1万円オーバーして住民税課税対象になります。

Bさんが、非課税になるために年金を繰り下げて、その期間中「収入ゼロ」になるのは現実的ではありません。貯蓄があるなら5年間取り崩さなければなりません。取崩し生活は経済的にも精神的に、もかなり負担がありますよね。

そこで働くことが有効な手段となります。それを次で見てみます。

 

■ 繰下げして60歳代で働く場合

事情が許されて、本人が望むなら、働ける限り働くことはかなり有効です。

「ちょっと待ってよ。働くだけ働いたら収入が増えて非課税ラインを超えてしまう」

――確かに。同じ働くにしても、非課税限度内でいられるかどうかが問題ですね。

そこで、「年金を繰り下げたうえで、働く」場合を詳しく見てみましょう。

前提として、給与収入だけで住民税非課税になるラインはどこか?

単身者であれば、給与収入は約110万円が住民税非課税の境界ラインです。これを維持して70歳から繰下げ受給することになります。

でも、65歳以降単身者で年金収入のみなら非課税になるには155万円以下でしたよね。その差は45万円

年金収入なら155万円までOK,なのにそれをわざわざ110万円まで落として働く。これって、本末転倒じゃないですか?

非課税に固執して働く時間を制限し、結果として世帯収入を下げてしまう。確かに70歳からは増額された年金をもらえますが、所得オーバーで非課税にはならない。

これはある意味機会損失ではないか。収入を増やせるのに増やさない。じつは、非課税世帯を卒業して課税世帯になっても、増えた手取り収入の方が、失う給付金を上回る、という逆転の考え方があります。

 

■ 「年金+給与」で収入調整

ここでは、65歳以上妻帯者のCさんの例で見てみます。

Cさん:年金収入 144万円(月額12万円)

・配偶者:年金収入 72万円(月額6万円)

・世帯合計:216万円で住民税非課税

年金収入は繰上げ・繰下げでもしない限り、変えようがありません。そこでCさんは住民税非課税の境界ラインまで働こうと思っています。その場合、世帯の合計所得は45万円が上限です。

Cさん:年金収入144万円-公的年金等控除110万円=年金所得44万円

給与収入 85万円-(給与所得控除74万円+所得金額調整控除後10万円)=給与所得1万円

合計所得は45万円です。

これにより、世帯で現状の年金収入を得ながら、住民税非課税でいるためには、Cさんは給与収入を年額85万以下(月額約7万円)に抑えなければなりません。

これで世帯合計収入は301万円(144+72+85となります。

 

■ 非課税世帯の境界線を超えると

先ほどのCさん。境界ラインを守るために働けるのは85万円でした(月7万円)。でも、65歳でももっと働くことは可能です。

そうすると、肝心の税金ですが、じつは、実際に住民税非課税の境界付近では、「税金そのもの」は驚くほど大きくはないのです。

住民税は所得割10%+均等割(+森林環境税)で構成されます。所得割は一律10%で、均等割等は概ね年間5,000円程度。

例えば、

  • 非課税ラインの少し下 住民税0
  • 非課税ラインの少し上 課税所得5万円

の場合、住民税の所得割は約5,000円。これに均等割等約5,000円を加えても、年間1万円前後だったりします。(金額は自治体によります。)

所得税はもっと小さくなります。最低税率は5%なので、課税所得が5万円なら所得税は約2,500円。つまり、非課税ラインを少し超えた人が負担するのは、

・住民税 約1万円

・所得税 約2,500

合計でも年間1万~2万円程度というケースは珍しくありません。

そこで、どこまで住民税非課税世帯の恩恵を期待するかの問題となります。

 

■ 非課税を超えて負担が生じるもの

非課税ラインギリギリの人は、実は税金そのものより、介護保険料などの『負担割合』の変化が実質的な打撃になります。では、非課税を超えて負担が生じるものは何か。

1・・・・税金の発生。年間12万円程度。

2・・・・介護保険料や後期高齢者医療保険料の区分変更。年間数万円。

3・・・・年金生活者支援給付金が対象外に。年間数万円~十数万円。

4・・・・高額療養費や介護施設負担の区分変更。病気や介護時に影響。

 

ここなんですね。だから「非課税を超えると税金が大変」ではなく、「各種制度の区分変更の影響が大きい」というわけです。

でも、今見てきたように、年金に給与収入をもっと上乗せできるなら、もはや非課税ラインで迷うことはなくなるわけです。

働けるならもっと働きたい、そういう高齢者も増えています。

ただ、「高齢者にもっと働けと言うの?」

――そういう方、無理に働かないでけっこうです。そのための非課税優遇制度なのです。

 

■ 非課税維持のために収入を抑えるのは正しいか?

「非課税を維持」したとして、それによって老後の資金そのものが増えない。

住民税非課税の軽減措置は、生活が苦しい人を支えるための大切な制度です。

しかし、だからといって非課税でいること自体を目的にする必要はありません。

「年金を増やせるなら増やす」「働けるなら働く」-その結果として課税される対象になったとしても、それは必ずしも損ではないといえます。

最後に、自治体によって基準が異なる場合があるため、必ずお住まいの役所で確認してください。

(2026.06)

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