1 はじめに
国債金利が上がりました。これで「老後の運用は債券で決まり」
――確かに。株下落でこけたら、大事な資金が減ってしまいますからね。
でもちょっと待ってください。債券なら絶対減らない? そこで穴にハマる人とそうでない人の違いが出ます。
債券運用の秘策は?
2 推移グラフ
この動画現在、10年国債の金利が2.40%台、個人向け国債も10年変動で1.55%です。
わずか2年ちょっと前は0.6%台でした。株式ほど変動がないはずの債券、これなら減らさず、長くお金を持つには、債券運用はもってこいです。
3 落とし穴の分かれ道
でも、意外と知らない債券。
例えば、金利が上がると得か、損か。
「それは、利子が付けば付くほど、得に決まっている」
――ふつうは、そう思いますよね。でも、違います。
「え?」と思いますか。
ここが、“穴”にハマる人とハマらない人の分かれ道です。
一口に「債券」といっても、実は中身はかなり違います。
例えば、こんなことが頭の中でごちゃごちゃになっていませんか?
先ほどの金利が上がると得なのか、これについてはこう考えてみます。
今日はこれを一度、きれいに整理します。そして最後に、
「あなたはどれを選ぶべきか」――ここまでお話しします。
4 元本保証されない“穴”
債券運用と言っても、国債の場合は個人向け国債と新窓販国債があります。それに加えて、債券ファンドもあります。
債券ファンドを挙げたのは、新窓販国債がまだなじみが薄いということもあります。債券ファンドなら個人向け国債や新窓販国債に投資する投資信託もあるし、NISA対象で利便性もあるという点からです。
どれも同じ「債券」の括りですが、中身はまったく違います。何が違うか。一番は、売った時に元本確保できるかどうか、です。
「え、債券でしょ。元本確保に決まってるじゃん」
――そう思いますよね。
ここで“普通の債券”の動きを見るために新窓販国債を例にし、個人向け国債との比較表をまとめておきます。
細かいところは後で確認していただくとして、
「元本保証」のところをご覧ください。まず1つ目のポイントは「元本保証」ありとなし。
個人向け国債は1年経過後は中途換金でき、満期前でも元本はいつでも保証されます。金利が上がると、変動型は利率が上がります。
しかし「新窓販国債」、こちらは元本保証がありません。ここのところ分かりにくいですね。正確には、満期まで持っていれば元本は保証されますが、中途で売却すると、利益が出る場合もあるけれど、損失も出る、ということです。
これは下段の、債券の市場流通性によるものです。
5 市場流通での損得感
債券は毎日価格が動く。金利が上がると、価格は下がる。ここですね。
同じ国債なのに、どうしてこうなるか。
これは、債券が「市場」で動いているか、動いていないかの差、つまり「流通されているか」の違いです。ここが2つ目のポイントです。
・個人向け国債・・・こちらは元本(額面価格)が固定していて、その上に変動または固定の利息が乗っていく。途中で売却しても、その債券を国が買い取ってくれる。ここが重要です。流通性はありません。
・新窓販国債・・・こちらは市場で「流通」しています。今ある1%利付債券と、これから出る2%利付債券、どちらを買いたいですか?
1%債券は、「利率が低くなる分、安く買われる」。市場で売るということは、“買う人にとって得かどうか”で価格が決まります。
だから「金利が上がると、古い債券は安くなる」
ここのところを理解しておかないと、いつまでたってもこの債券価格の損得がわかりません。
個人向け国債は元本保証ですから、まずこれを「預金+α」、すなわち「利率の良い預金感覚」として持っておく。それに加えて、個人向け国債よりは金利で有利な新窓販国債を持つという方法があります。
6 ファンドとしての国債
ここで債券ファンドの登場です。個人向け国債との比較を掲げておきます。
債券ファンドは、国債・公社債などに投資する投資信託です。
日本債券インデックスファンドは、このような国債などの価格の値動きをインデックスとしていますから、新窓販国債を持つのとほぼ同じ意味があります。
もちろん商品として厳密には違いますが、ここからは、債券運用として、新窓販国債を債券ファンドと置き換えても見ていきます。
ここでは、分配金を出さずに再投資していくタイプの話になります。
●個人向け国債は、価格がほぼ横ばい、ゆるやかに増えていきます。利息は単利で積み上がっていくからです
●一方、債券ファンドは、価格が上下しながら動きます。市場で売り買いされているからです。
多くの方は、「債券=安定」と思っていますが、このように「流通市場」では、普通にブレます。ここが、かなり誤解が多いポイントですね。
最近、「金利が上がっている」。これで、多くの人はこう考えます。「金利が上がる=債券に有利」
――これは半分正しいです。
個人向け国債は、先に見たように金利が上がると、利率が上がり、利息が増えます。
一方、債券ファンドは、金利が上がると、価格が下がります。先ほど見たように、金利の代わりに、その分価格を下げないと買い手がいないからです。
同じ“債券”でも、結果は逆に出ます。ここを知らないと判断を間違えます。
付け加えておくと、国債はNISA対象外ですが、債券ファンドはNISA対象商品です。
7 相続でも債券下落?
繰り返しになりますが、途中で売ったらどうなるか。もうおわかりですね。
個人向け国債は、途中で解約しても、大きく崩れることはありません。国が買い取ります。
一方、債券ファンドは、売るタイミングで結果が決まります。
「それなら満期まで持てばいいじゃない?」
――そう。でも、現実はどうでしょうか。満期まで、持ち切れますか?
老後資金は、途中で動きます。医療、介護、入院、事故などいろいろな状況で取り崩し局面があります。つまり、“途中で売る前提”で考えないと生活は危うい。
そして、もう1つ大事なことがあります。
相続です。もし、この資産を遺族が受け取ったら、どうなるでしょうか。
個人向け国債の相続税評価額は、そのままの「価値」、つまり「額面+経過利息」です。引き継がれます。
一方、債券ファンドは、その時の「価格」つまり「時価評価」で受け取ることになります。
「価値」と「価格」――似たようで、全く違います。「価値」は、いわば「元本+利息」。「価格」は、買う人の思惑(損得感)が籠められた金額。
受け取る側は“金利=運”に左右されます。ここがもう1つの「穴」ですね。
――生前、夫が「債券1000万円」持っていると言っていた。妻がそれを当てにしていたら、相続時に金利上昇で価格が落ちて900万円、これ、普通に起きることです。
8 選び方のマトリックス
ここまでを踏まえて、最後に考えてみましょう。例えば退職金でも、運用の結果でも、まとまった資金ができた。老後資金用だから、あまり攻める積極運用よりは安定運用したい。その利用法を考えてみましょう。
選び方はシンプルです。「運用期間と、ブレにどれだけ耐えられるか」
わかりやすく、マトリックスにしてみました。
横軸は運用期間(短期か長期か)、縦軸は価格のブレ許容度。
さて、あなたはどのタイプですか?
9 債券運用の具体的チョイス
マトリックスは、後で見ていただくとして、具体的なチョイスに入ります。(以下、表にする。全部読まない、太字だけ読む)
①絶対に減らしたくない→ 個人向け国債。ただ、満期保有が確実なら、新窓販国債の方が利回りはいい。
②短・中期で使う可能性がある(いつでも使える)→個人向け国債。ただし、最低1年は売却不可。
③中・長期(10年くらい)で持つ→債券ファンド。ただ債券ファンドは、投資信託である以上、満期でも元本確保になるとは限りません。長期満期が確実なら、新窓販国債が適していますが、最長で10年です。
④超長期(20~30年)で安定的に持ちたい→ 債券ファンド。利回りが高いものがあります。ただ、満期まで持っても元本保証とは限りません。
⑤少しの変動ならOK→ 債券ファンド+個人向け国債。個人向け国債を入れておくと価格変動のヘッジとなります。
⑥安定的に増やしたい→ 個人向け国債か債券ファンド。株式から債券へ比重を移行する方法として「株+債券」が適しています。
以上はあくまで一例です。ここでの答えは1つではありません。詳細は後でご覧ください。
最後に。債券価格が金利で上下するなら、金利が上がりきったところが「買い得ってこと?」
――そうなります。でも、「金利のピーク」なんて、プロでも難しいので、積み立てで時間分散するのが無難です。
10 まとめ
大事なのは「どれを選ぶか」ではなく、「どのように選ぶか」
――“債券だから安全”ではなく、“どういう債券か”で結果は変わります」
そこを理解しているかどうか、そこが債券運用の穴にハマるかどうかの違いとなります。
退職金や老後資金は、最後の資産設計です。「なんとなく安全そう」で選ぶと、
あとで大きな差になります。
(2026.04)