85歳で底つく ~ 2000万でも足りない退職金 老後が崩れる3つの悪手

1 はじめに

「退職金2000万円」の安心感が、85歳で「赤字」に変わる現実

退職金2000万円あっても、じつは綱渡り。85歳でほぼゼロになります。

そして、選択を間違えると、もっと早く崩れます。

やってしまうと崩れる3つのNGの選択 本当に老後は持つのか?

 

2 前提整理(Aさんモデル) 

●ローンなし・子なし夫婦が、なぜ「退職金だけ」では足りなくなる?

 

Aさん。ローンなし、貯蓄なし、退職金だけではやっぱりだめなのか?

Aさん 60歳退職(妻も同年齢) 子はなし

・生活費:月25万円(持ち家・ローンなし)

・予測寿命:85歳とします。
このあと、図解して見てみましょう。単純化するため税金や社会保険料は控除後、特別収入・支出は無視します。

 

3 前提整理(Aさんモデル)

●(図解)

 

・再雇用: 月15万円(〜65歳)
・年金: 夫婦で月20万円(65歳〜)

DC: 退職金のうち1000万円(債券運用10年取り崩し)
・予備資金: 300万円(退職一時金から不足分取崩し)

・成長資産(主に株式): 700万円(退職一時金4%運用で取り崩し)

・結果は、85歳で退職金はゼロになります。

 

■4 資金寿命シミュレーション 

●運用しても1年長生きするごとに赤字

 

結論はこうです。

70歳以降:5万円不足・・・これは成長資産で取崩し、補填します。
・年平均4%運用で約15年持ちます。

ただし、85歳でほぼ使い切り。つまり、1年でも長生きすると赤字生活に入ります。90歳まで生きた場合、約300万円不足します。

理由は3つのリスクです。

   長生きリスク・・・実際は90歳、95歳まで生きられる方もいます。5年延びると300万円不足します。

   運用リスク・・・「最初の数年」、ここで暴落すると資産が回復せずに減り続けます。

これは収益率順序リスクといいます。シーケンス・オブ・リターンズ・リスク” Sequence of Returns Riskと呼ばれる考え方です。同じ平均利回りでも、最初に下がるか後で下がるかで、結果は全く変わります。別の動画でも解説したいと思います。

   支出増加リスク(+インフレリスク)・・・・医療費、介護、リフォームなど、後半ほど支出は増えます。

今回は計算をシンプルにするため物価変動を抜いていますが、インフレが起これば月5万円の不足分はさらに膨らみます。だからこそ、現金だけでなく、リスクを抑えた形での『一部運用』が必要不可欠になります。

 

5年金を増やしたら 

不足分を補う「繰下げ」が、60代後半を破綻に

ここから3つの悪手をみていきましょう。

悪い選択❶年金繰下げ

「じゃあ足りないなら、年金を増やせばいいじゃないか」

――そう、年金の繰下げですね。確かに効果はあります。

 例えば、65→ 70歳に繰下げ・・・・約42%増となります。

夫婦で繰り下げたら、月20万円が約28万円

これは大きいですね。でもAさん夫婦には致命的な問題があります。

6570歳の空白期間をどうするか?

Aさんの現状(6570歳)

・繰下げ中は年金なし
DC:月9万円のみ

生活費25万円に対して16万円不足

実際に65歳の時に、DC残高は半分、約500万円に。

これを毎月16万円取り崩すと、31カ月、2年半ほどでなくなります。70歳まで、あと2年半、つまり、途中で資金が尽きます。

「増えるのは将来、減るのは今」

本来DCは「70歳までの生活を支える柱」だったのに、つなぎ資金にもなりません。

 

6 希望的な年金対策 

●「年金を増やすために、資産を削る」 -これを防ぐ現実的な処方箋

 

ただ希望もあります。70歳までの対策として、

・パターン:一部「繰下げ+就労」

・夫のみ繰下げ+就労を継続する
・妻は65歳受給

これで最低限の収入を確保可能です。

 

・パターン:夫婦で「繰下げ+就労」

夫婦で繰下げし、おのおの月510万円働く・・・今は65歳以降も働く人が増えています。

 

繰下げ――「増えるのは将来」、ここを忘れないでください。ギリギリ設計の人は逆に危険です。「年金を増やすために、資産を削る」――これが本末転倒になるケースで、非常に多いです。

もう一つ、重要なこと。それは「生存寿命=資金寿命」となるとは限らない。そこの見極めです。繰下げが始まってすぐ死亡、これでは我慢の5年間が報われません。

 

■7 DCを全部株式にしたら

●生活費の出口でリスクを取ると致命的に

 

悪い選択❷株式運用

ここで多くの人が思います。

「わかった。だからこそDCを全部株式にすればいい。1000万円もあるのに、債券運用で利回り1%はもったいない」

――では、簡単にみてみましょう。

60歳時点でDC取崩し開始で1000万円あります。

・これを株式100%に運用指図で変更
・その直後に▲30%下落したら? 1000万が700万に。

期待リターンを上げれば計算上の寿命は延びます。

しかし、取崩し期での暴落は現役時代とは重みが違います。月25万の生活費が必要な時に、資産が半分になったら?……これが一番のリスクです。

もともとDC1000万円は生活資金のため安定運用が鉄則でした。

この1000万円は、増やすお金ではありません。

生活を守る最後の砦です。

ただ、ちょっと現実的な話、100%債券でなく、「債券70%+株式30%」くらいの運用は許容範囲。取崩し期間が10年ありますから、多少のブレは吸収できるでしょう。

 

■8 毎月分配型投信にしたら 

●「年金代わり」が資産を自動で削り取っていく

 

悪い選択❸毎月分配型投信

さらにこう思う人が出てきます。

「同じ取り崩すなら、毎月分配型でいいじゃないか」

――確かに。DCは取り崩し前提ですからね。

でも本質は「分配金=利益」とは限らない。多くの場合「元本の取崩し」となります。

DCだって、元本を取崩していくのは同じではないか」

――いいえ、DC は自分でコントロールできます。分配型は自分でコントロールできない自動取り崩しです。最悪パターンは、

相場が悪くなる→それでも分配される→元本が削られる→基準価額が下がる

毎月分配型は、「年金に見えて、年金ではない」、下手すると、自動で減っていく仕組みのものです。

確かにDCの年金機能は、金額変更は不自由です。だからこそ、いったん『一時金』で受け取って、自分の口座で自分の調整で取り崩す

それに本来、DCであれば非課税で再投資に回せたはずの利益を、分配型は無理やり外に出してしまう。

DC口座内での運用や、一時金受取後のNISA活用なら税制優遇がありますが、毎月分配型投信は高い信託報酬や分配時の非効率性がコストとしてのしかかります 。

こういうことから、長期的な運用効率(=資金寿命)は、毎月分配型の方が短くなる傾向にあります 。

 

■9 老後資金の持たせ方 

●運用益に頼らない働き方と支出の調整力が武器に

 

理想を言えば、予備費として5001000万円は退職までに貯蓄として持っておきたいところです。それでAさんは何とか90歳まで生きられそうです。

それが無いなら、12年の延命策が、後半の10年を救うことになります。

それは4つです。

① 12年でも長く働く・・・最強の改善策。取り崩し開始が遅れる、その分運用期間が伸びる。かなり効果が見られます。

3万円でも稼ぐ・・・不足が半減します。これは夫婦の協力が必要です。

取崩しを可変型にする・・・毎年一定額ではなく相場に応じて調整します。

・良い年 多め、悪い年 減らす

使い切る生き方を持つ・・・子がいなくて相続なしなら、「死ぬときにゼロで死ぬ」。それもあります。ただし、自分の寿命がどこで尽きるか? つまり、ここでも「生存寿命=資金寿命」の見極めがだいじになってきます。

 

最後に、すべてに前提があります。節約できるところは節約する。ただし、逆説になりますが、「余裕がある時こそ、ちょっと節約する」。ギリギリの生活で節約はきつすぎます。

 

■10 まとめ  

●運用だけではなく、年金・就労・支出を統合して「崩さない」

 

今回の結論です。Aさんの設計は成立します。でもギリギリ。崩れる原因は選択ミス”3

   年金繰下げの「空白埋め」で崩れる

   DCを攻めると崩れる

   分配型に逃げると崩れる

結局、「運用だけで何とかする話ではない」ことになります。

・年金・働き方・支出・資産配分全部で成立させるものです。

 

こうしてみると、最大のリスクは「想定以上の長生き」。長寿はもちろんおめでたい、だからこそ調整力が必要です。これが老後設計の本質ですね。

 

今回は単純化したシミュレーションでした。細密なキャッシュフロー表は専門家にご相談ください。

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