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前回、『金融所得が社会保険料に影響する方向で制度が変わる』という話をしました。すると、今まで申告不要だから安心と思っていた方、こんなふうに思いませんでしたか。
「源泉徴収で安心・楽ちんだったのに、確定申告しないとダメ?」
実は、今までの常識が変わるかもしれません。
「申告不要のままでいいのか?」「NISAとの使い分けは?」
今日は、その疑問にお答えします。
■ なぜ「申告不要」が問題なの?
先に、結論を言っておきます。
①税金だけで判断しない
②見るべきは手取り
③選択は人によって違う
多くの方は証券会社の特定口座で「源泉徴収アリ」を選んでいるのではないでしょうか。では、この申告不要制度がなぜ問題になっているか。簡単に前回を振り返ってみましょう。
「源泉徴収あり」の方法では、所得分にかかる社会保険料が算定されず、徴収もされない。そこで、申告不要の所得についても社会保険料に算定せよ、となったのですね。
つまり今までは、税金だけ払えば終わり。これからは社会保険料も払うかもしれない。これだけ覚えてください。」
これは主に上場株式の配当についてですが、譲渡益についても検討されています。
この法案は本国会に提出、と財務省資料にありますから「風雲、急!」・・・と、焦らないでください。仮に本国会で成立しても、施行は来年、再来年でしょう。
詳細は前回のこちらの配信をご覧ください。
■ 申告の仕方
ということで、このまま特定口座にしておいていいのかどうか、という疑問が出てきますね。
では、今ご自分の持っている口座をどうするか。それを考えるためには、現在の申告制度を知る必要があります。わかりやすく簡単に説明します。
証券口座には、3種類あります。
①特定口座の「源泉徴収あり」・・・原則、確定申告不要(申告もできる)
②特定口座の「源泉徴収なし」・・・原則、確定申告が必要
③一般口座・・・原則、確定申告が必要
さらに、申告の方法には3種類あります。
①申告不要
②申告分離課税
③総合課税
「源泉徴収あり・なし」は、税金の納め方の違いです。一方、「申告不要・申告分離・総合課税」は、所得をどう申告するかという違いです。この2つは似ているようで別の話なので、混同しないようにしてください。
それから、譲渡益は原則として申告分離課税です。特定口座「源泉徴収あり」なら申告不要を選べます。
わかりやすくするために、1つの表にしました。これは上場株式の配当の場合です。
まずは赤枠部分を注意して見てください。ほかの詳細部分は後でご確認ください。
|
項目 |
①申告不要制度(特定口座・源泉徴収あり) |
②申告分離課税(特定口座・源泉徴収なし等) |
③総合課税(配当所得) |
|
源泉徴収 |
○(証券会社が徴収) |
×(自分で申告・納税) |
○(配当支払時に源泉徴収。申告で精算) |
|
確定申告 |
不要(※任意で申告も可) |
必要 |
必要 |
|
配当控除 |
× |
× |
○ |
|
株の譲渡損失との損益通算 |
× |
○ |
× |
|
損失の繰越控除 |
× |
○ |
× |
|
所得として申告される |
原則されない |
○ |
○ |
|
社会保険料への影響 |
現行では比較的小さい(制度改正の動向に注意) |
影響する可能性 |
影響する可能性 |
|
向いている人 |
手続きを簡単にしたい人 |
損益通算・繰越控除を活用したい人 |
配当控除を活用したい人 |
|
■ 簡単なケース① |
それでは、課税口座や申告方法を考えるうえで、簡単なケースで考えてみます。金額はあくまで説明のために出した仮のものです。
●ケース1 損益通算の例 Aさん 72歳 年金生活
Aさんは、申告したほうがいいか?
➡(a)申告不要なら、税金はそのまま徴収され完了。
(b)申告分離課税で損益通算すると、約25万円×20.315%≒約5万円還付(税金が戻る)
※ただ、特定口座のままでも、申告を選べば損益通算は可能です。
→ しかし、国民健康保険が2万円増える→差引3万円得
したがって、「A さんは申告分離課税で損益通算する方が有利」となります。
■ 簡単なケース②
●ケース2 配当控除の例 Bさん 68歳
Bさんの課税方法は?
➡総合課税で配当控除利用・・・所得税・住民税が、例えば1万5千円軽減
→ しかし国保2万円増える→差引5千円損
「社会保険料が増える」――これだけ聞くと、「じゃあ申告しない方がいいか」と思ってしまいませんか?
「源泉徴収なし」に変更すると「確定申告の義務」が発生します。今回の制度改正で「申告不要の所得も社会保険料の算定対象にする」という方針がある場合、「源泉徴収あり・なしに関わらず、申告の有無が焦点になります。
■ 特定口座をやめるべき?
「じゃあ、『源泉徴収あり』から『源泉徴収なし』にすれば、社会保険料の問題もなくなるのでは?」
――と思う方がいます。しかし、そう簡単ではありません。
「源泉徴収あり・なし」は税金をいつ・誰が納めるかの話であり、申告するかどうかとは別の話です。
また、前回の続きになりますが、税金だけでなく、社会保険料まで考えなければならない。ここが一番重要です。
ここで、「特定口座をやめるべき」――というのは、早計です。単純に一般口座に移せばいい、というものでもありません。
実際には、
の両方がいます。
今後は金融所得反映の制度改正が進めば、この判断がさらに重要になります。
答えは人によります。それをここから見ていきます。
■ 判断基準は税金だけではない
例えば、投資で利益が出たとします。現状では、
①申告しない・・・税金だけ払って終了。社会保険料への影響は小さい。
②申告する ・・・税金は減ることもある。しかし、社会保険料は増える可能性もある。
最終的に、どちらが得? ここが皆さんの一番知りたいところですね。
「移すメリット」の本当の意味は、実は、「特定口座から一般口座へ」ということではなく、「申告する前提で運用するかどうか」という考え方なんですね。
なお、「今持っている株を特定口座から一般口座やNISA口座へ移す」――これも、
実はそんなに簡単な話ではありません。
たとえ「源泉徴収あり」の特定口座であっても、自分で確定申告をすることはできます。つまり、実際に見直すのは「株を移す」ことではなく、
「どの口座で運用するか」
「どの方法で申告するか」
この2つを見直すということです。
詳しい手続きについては、ここでは省かせていただきます。証券会社などにお問い合わせください。
■ NISAではどうなる?
ここで気付いた方もいるでしょう。「じゃあNISAならどうなるの?」
――そう思いますよね。
さすがに非課税口座にしたものまで、社会保険料の所得算定に含めるのは、非課税本来の趣旨にあわないのでは?
ということで今回の改革からは除外される見込みです。税と社会保険は別制度、とはいえ、ちょっと安心ですね。
すると、「NISA枠を優先して使う意味」がこれまで以上に出てきます。では、このNISA枠からはみ出た場合はどうするか。
確認しておきますが、NISAの非課税枠は、
両方の枠を併用して年間で最大360万円まで、生涯の限度額1,800万円です。
先ほど見たように、
・配当収入多い場合は →総合課税を検討
・株で損失が出た場合は →損益通算を検討
このように、答は一つではありません。
■ まとめ ―― 税と社会保険を合わせた“手取り”を最適化する
「制度が変わる前に、今のうちに特定口座の株を売却した方がいいか?」
――最後に、これについて考えます。売却は早計です。売却による譲渡税の発生の方がダメージが大きい場合があります。焦って売るより、改正の内容を注視し、今のうちに「自分の年収と社会保険料の境界線」を知っておくことが先決だと思います。
もうひとつ。今回の改革で見落としがちなこと。それは「源泉徴収なしが今まで免除されていたのになぜ今?」・・・これについては財務省の「持続可能な社会保障制度の構築」という名目のもと、「応能負担の徹底」ということがあります。
ここでは、制度改革に対する考えは別において、私たちとしては、制度への改変に伴ってどう対処するか、ということが課題になります。
これからは、税金、国民健康保険料、介護保険料、医療費の自己負担割合まで含めて、申告方法や口座の使い方を見直し、税金と社会保険料を合わせた“手取り”を最適化することが必要になりそうです。
(2026.07)