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昨年、年金改正がありましたね。動画でも1つずつ取り上げてきました。
では、今年からどうなる? 年金が増えるのに、手取りは損! そんなこともあり得ます。
今回は年金アップに伴って変わる、2つの大事なトピックスについてお話しします。
制度の説明だけでなく、私たちの「これからの生活にどう影響するのか」という視点で解説します。
■ 年金が上がる → 手取りはどう?
1つ目のトピックス。令和8年4月分から年金額が改定されました。6月の振り込み分からです。実際の手取はどう変わるか?
・老齢基礎年金(満額)
70,608円 69,308円から月1,300円アップ(+1.9%)
年間で15,600円増です。
・モデル夫婦世帯
237,279円 232,784円から月4,495円アップ(+2.0%)
年間で53,940円増となります。
「年間5万円増えるなら助かる」―そう思った方も多いでしょう。
でも、ちょっと待ってください。実は、その5万円のせいで、それ以上の損をしてしまう人が出る可能性があるんです。
そこで、「手取りは増えたか?」 ぜひ確認してください。確認の仕方はこの後説明します。
ちなみに、老齢年金の受給額に連動して遺族年金、障害年金、年金生活者支援給付金の金額も変わりますが、今回の焦点ではないので省きます。改めて配信したいと思います。
■ 増額されたのに手取りが増えない
さて、今年の年金額がわかったところで、ここからが今回の核心です。
「あれ、年金上がったはずなのに、振込額は増えてない?」
――こんな方、いらっしゃいませんか?
年金が増えると、所得が増える。それで、税金や社会保険料も増えるからです。
変わるものと言えば、
ちなみに、国民年金保険料や厚生年金保険料率は基本的に変わっていません。
でも後で見るように、年金もらって働いている人は、所得によって差し引かれる厚生年金保険料が上がりますので、その点でも手取り額の変化を確認しておきましょう。
■ 手取りが変わる境界線 ①住民税非課税世帯
では、年金の手取りが変わる境界、その際(きわ)はどこか、見ていきましょう。
●境界①
特に注目したいのが、住民税非課税世帯の境界です。人によっては「境界の壁」いえ「境界線の恐怖」になりかねません。
年金が増えたこと自体は良いことですよね。でも、収入がわずかに増えたことで、非課税世帯ではなくなる方もいます。もろもろの控除により手取りが減りこともありますが、もっと大きい変化があります。
それは、いろいろな給付や軽減措置の対象から外れることがあるのです。それによって「実質的な激減」になる・・・こともあります。
・住民税非課税世帯・・・この境界は、自治体差はありますが、65歳以上の高齢単身世帯では年金収入がおおむね155万円前後の付近です。高齢夫婦世帯では211万円前後です。
こう思っていませんか? 非課税世帯を外れても、
「収入が少し増えるんだから、税金くらい払ってもお釣りがくるでしょ」
――問題は境界線付近の収入ですね。境界を超えても手取りが増えれば問題ありません。でも1ミリ(1円)でも超えてたら、対策が必要です。
■ 非課税世帯の優遇措置
これが「隠れた損」の正体です。
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優遇項目(制度) |
住民税非課税世帯のとき(優遇) |
課税世帯に外れるとどうなる?(緊張感) |
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① 医療費の上限 (高額療養費制度) |
月の自己負担上限が**「24,600円」**など非常に低く抑えられている。 |
外れると一般的な上限(現役並み所得なら8万円+αなど)になり、医療費の自己負担が跳ね上がる。 |
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② 入院時の食事代 |
1食あたり**「110円〜230円」**に減額されている。 |
外れると一般料金の**「490円」**になり、入院が長引くほど食事代だけで大赤字に。 |
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③ 介護保険料(65歳以上) |
基準額より**「約3割〜5割」も安く**設定されている。 |
外れると段階が一気に上がり、毎月(毎年)支払う介護保険料そのものが高くなる。 |
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④ 介護サービスの上限 (高額介護サービス費) |
月の自己負担上限が**「24,600円」**に抑えられている。 |
外れると上限が**「44,400円」にアップ。介護を多く利用する世帯は月約2万円の負担増**。 |
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⑤ 国民健康保険料 |
前年の所得に応じて、均等割額が**「2割〜最大7割」自動的に減額**されている。 |
外れると減額措置がすべて消滅し、保険料の請求書を見て青ざめることになる。 |
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⑥ 政府・自治体の臨時給付金 |
物価高騰対策などで、定期的に**「3万円」「10万円」といった現金給付**の対象になる。 |
1円でもボーダーを超えたら支給対象外。「お隣さんは貰えているのに、うちは貰えない」という事態に。 |
仮に年金が年間で3万円増えたとしても、そのせいで非課税世帯から外れてしまったらどうなるか。
介護保険料が年間2万円高くなり、もし入院でもしたら医療費と食事代で数万円が吹っ飛び、さらに政府からの3万円の給付金も貰えなくなります。
増えたのは3万円なのに、出ていくお金は10万円以上増える……。こういうことが、この境界線(155万円・211万円)の付近では本当に起こりえます。
だから、この時期、絶対に確認が必要なのです。
■ 年金振込通知書
では自分が非課税世帯を超えるかどうかわからない場合、どうやって確認するか。
いちばん簡単な方法は、まもなく皆さんの手元に届く(あるいは届いている)、日本年金機構からのハガキ――「年金振込通知書」を見ることです。
そこの住民税欄がゼロなら、非課税の可能性があります。ただし、これは目安で、確定できません。
確実な確認方法は市区町村で「課税証明書」または「非課税証明書」を取得することです。マイナンバーでコンビニでの取得も可能です。
まずは、年金振込額が前回と多いか少ないかで、大雑把にはわかりますので、さっそく確認してみてください。
■ 手取りが変わる境界線 ②介護保険と医療保険料
●境界の2つ目は
・介護保険料の所得段階・・・介護保険料は、所得段階ごとに区分されます。例えば、前年収入が80万円以下・・・81万円になるだけで段階が上がる自治体もあります。
●境界の3つ目は
後期高齢者医療保険料の所得区分・・・75歳以上では、所得区分によって保険料率が変わります。
このように年金増額→所得増→保険料増のケースもあります。医療費・介護保険料が老後資金に与える影響は大きくなるでしょう。
境界線付近の人は、増えた金額以上に負担が増える場合があります。
そこで、こんな疑問。
「結局、いくら以上の年金だと損するの? その目安は?」
――確かに、具体的な金額がわからないと、もやもやしますよね。
これについては、非課税世帯の「155万円前後」という目安はありますが、医療費や介護保険の境界線は自治体や扶養家族によってバラバラです。
だからこそ、ご自身の「通知書」や「非課税証明書」を直接確認するのが一番確実な方法なのです。
■ 在職老齢年金の改正 —働きながらもらえる年金も増える
トピックスの2つ目。今年度から実生活に大きく関わる年金改正が昨年ありましたね。そうです、在職老齢年金です。
年金をもらいながら働く人の場合、年金の支給停止基準額がこの4月から
・51万円 → 65万円
これだけ引き上げられました。これは制度改正としてはかなり大きい変更です。この影響はどうなるか?
上の表が昨年度まで、下の表が今年度の受給停止額の早見表です。
表の横軸が総報酬月額相当額(賞与含めた年収の月額相当の給与分)です。
縦軸は基本月額(厚生年金の月額分で、基礎年金分は含まない)です。
金額が「0」の欄は、年金停止額が「なし」、つまり全額、厚生年金がもらえます。ちなみに基礎年金はもともと減額対象ではありません。
例えば、
上の表で基本月額が10万円の人の場合、年金が全額支給となる総報酬月額相当額は、41万円です。
これが下の表では、55万円へ引き上げられます。
・給与55万円
・老齢厚生年金10万円
・合計65万円
となり、同じ年金10万円なら、月額55万円まで働いても年金は満額もらえます。これまで、「これ以上働くと損だから仕事をセーブしなければ」と気にかけながら働くことがありました。皆さんもそうではないでしょうか?
■ 在職老齢年金も手取りが大事
「いやいや、60代半ばで月額40万も50万ももらえる人がどれだけいると思ってるの?」
――そこですね。働きたい人はもっと働きたいという人がいる一方、実際は65万円ギリギリまで働ける人はごく少数派です。国としては、とにかく厚生年金保険料の納付額を増やすための制度改正という思惑もあります。
だから、現状を踏まえ、自分の目で「手取りのシミュレーション」をして、賢く立ち回る必要があると思います。その辺については、こちらの動画を参考にしてください。
今回の動画では、年金が下がってしまう際(きわ)の話をしています。
ここで言いたいのは、前半に戻って、年金の金額だけではなくて、所得の手取り額も見ようということです。
在職老齢年金のように、改正によってたくさん働けるようになったとしても、
所得が上がれば引かれるものも増えます。
個々の手取り額は、皆さんのこれまでの現役時代の給与や、ご家族の状況といった「個別事情」で全く変わってきます。だからこそ、簡単に「年収別手取り額」などでそのまま自分に当てはめるのは、ちょっと危ういかもしれません。
在職老齢年金で働きを増やす場合は、所得アップによって控除額も増えます。
■ まとめ
「手取りが減るかもしれないなら、年金なんて増えない方がよかった」
――そんなふうには思わないでください。
制度を知って事前に準備しておけば、働き方を調整したり、医療費の特例を使ったりと、打てる対策はあります。知らないで損をするのが一番もったいないですからね。
今日お伝えしたかったのは、年金額が増えたかどうかも大事ですが、実際の手取りがどう変わったかです。
年金も、税金も、医療保険料も、介護保険料も、これからの老後生活に直結します。
年金改正をきっかけに、ご自身のライフプランを一度見直してみてください。
(2026.06)