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在職老齢年金改正 手取り額で本当に得する人は誰か?

■2026年4月から在職老齢年金の停止基準が大きく引き上げられました。働けば働くほど、得?

でも多くの人は関係ないと思っています。

  • 停止基準が 51万円 → 65万円 に引き上げ
  • もともと給与と年金合わせて50万円の高齢者は少数

でも、本当に関係ないでしょうか?

もっと働きたい、働けば年金が減る・・・では実際に受け取る手取り額は?

今回は「これだけ働けば、どれだけ手取りが増える」を試算してみました。

 

■ 新旧の停止基準を比較

在職老齢年金改正の詳細は以前の配信をご覧ください。

ここでは簡単に説明します。賃金(総報酬月額相当額)と基本月額(厚生年金)の合計月額が次の金額を超えると、その超えた金額の1/2の年金が支給停止となります。

  • 旧基準(51万円)
  • 新基準(65万円)

旧基準では、年金15万円で賃金は36万円までなら、年金はまるごともらえました。

これが新基準では、同じ年金15万円で給与は50万円までなら年金は支給停止にならない。

つまり、同じ年金額なら月に14万円余分に働いても年金は削られないことになったのです。(ちなみに基礎年金は停止基準がありません。)

そこで、冒頭に言ったことが気になるでしょう。

「だいたい、65歳過ぎて給与が月に50万円もらえる人がどれだけいるの? 自分には影響なし」

――実は、そこです。実際には恩恵を受けやすいのは基準上限に属する人ではなく、境界ライン付近にいた人なのです。この狭間にいた人は、
働きたいけど、年金が減るからセーブしていた層です。ここが一番リアルに影響を受けるのです。

例えばこの表で、年金25万円の人は賃金26万円で我慢していた。それがそのラインを超えて30万円、あるいは40万円になっても停止にひっかからない。新しい停止基準上限まで働かなくても、恩恵はあるのです。

 

■ 恩恵を受ける人たち

「じゃあ、もう少し働いてもいいのか」

「年金減らないなら、月45万円の昇給もアリかも」

こういう行動の変化さえ起るかもしれません。

しかし、実際にこの改正で得する人は、どの層の人でしょうか?

「自分には関係ない」と思った人、その感覚は間違っていません。

「賃金+年金」が65万円の層の人、内閣府のデータ(2025年年金改正資料)で見ると、

65歳以上の年金受給者全体の7.2%程度です。今回の改正で直接恩恵を受ける層の人は8.2%です。

さらに、実際に影響を受けそうな人は、旧基準の境界ラインの手前にいた層16.6%を含めると25%前後になります。あと10万円働こうとして、抑えていた人たちですね。

 

■ 手取計算の前提

「でも、給与がアップすれば引かれるものも増える。どこまで働けばいいか?」

――その通りです。

  • 給与が増える
  • 社会保険料も増える
  • 税金も増える
  • 年金は減らないが、手取りはどうか?

「額面アップと手取りアップは違う」

――では、手取りで判断してみましょう。

ここから簡単な試算をしていきます。前提は次の通りです。

  • 65歳男性・単身・東京都在住
  • 社会保険加入
  • 老齢厚生年金:月15万円 基礎年金月7万円/
  • 賞与なし
  • 社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金)は65歳以上の標準的な料率で計算します。

 

■ 2026年度新基準で試算(1

パターン① 賃金36万円・・・旧基準で停止される上限です。

パターン② 賃金50万円・・・新基準で停止される上限です。

パターン③ 賃金45万円・・・旧基準と新基準の中間です。

結果は表の通りです。

●3パターンの試算結果(月額)

パターン

賃金

年金支給額(厚+基)

社会保険料(本人)

税金(概算)

合計手取り額

従来上限

36万円

22万円

5.7万円

2.3万円

49.0万円

改正上限

50万円

22万円

7.9万円

3.8万円

60.3万円

中間

45万円

22万円

7.1万円

3.3万円

56.6万円

税・社会保険料は概算であり、個人の状況により異なります。あくまで目安となります。

3パターンとも年金は全額支給(停止なし) 。手取り差は賃金の社会保険料・税の差だけで決まります。

 

■ 2026年度新基準で試算(2

パターン①の従来上限を基準に比較すると、賃金アップと手取りアップを比較すると表のようになります。

パターン

賃金アップ(率)

手取りアップ(率)

改正上限:賃金50万円

140,000

+38.8%)

113,000円(+23.0%)

中間:賃金45万円

90,000

+25%)

76,000円(+15.5%)

 

パターン②は、③に比べ、確かに金額で見れば給与は大きく増えてますが、税金と社会保険料も増えるため、 手取りの伸びは賃金の伸びほど大きくありません。

 

■ 「在職老齢年金VS繰下げ年金」の手取り比較

さて、ここで次の疑問が浮かびます。

「給与40万円以上働けるなら、いっそ年金は繰下げしてしまおう。そうすれば増額された年金がもらえる」

――これは、「在職老齢年金VS繰下げ年金」の手取り対決です。

まずは先ほどと同じ例で、

 「賃金45万円で70歳まで就労、年金合計22万円(厚生15+基礎7)」 を前提に、試算してみましょう。

①在職老齢年金(65歳から受給)

65歳から受給 手取り合計:約56.6万円/月

70歳以降→年金のみ19.0万円/

・65歳から75歳までの手取りの総合計は536万円

70歳まで働いているうちは厚生年金保険料を払いますから、その分、将来の年金は増える。いわゆる在職定時改定を含んでいますが、ただ、「保険料を余分に払ったから年金も大きく増える」と期待し過ぎると、少しあてが外れるかもしれません。

②年金繰下げ(70歳から受給)

6569歳→給与のみの手取り:約34.5万円/月

70歳以降(繰下げ42%増額後の年金) 手取り:約26.1万円/月

65歳から75歳までの総合計は3636万円

手取額の総合計で見ると、①在職老齢年金で働く方が900万円多くなります。

ただし、賃金と年金合計で85歳を過ぎる付近で累計手取りが逆転します。それ以上生きられることを考えると、繰下げの方が有利です。

ただし、これはあくまで『今、働くこと』を選んだ場合の試算です。繰下げの最大のメリットは、長生きした時に『死ぬまで増額された年金を受け取り続けられる』ことにある点も忘れないでください。

1つ大事なことは、年金受給開始した場合に在職老齢年金で支給停止となるであろう人は、その支給停止分の年金は繰下げ増額の対象にならないので注意してください。

ところで、6570歳くらいの方には、「元気なうちにお金を使いたい」という考えもあります。

つまり、85歳を超えれば得」も大切ですが、その前の十数年間を、どう生きたら本当に幸せか、という視点も同じくらい大切です。

 

■ まとめ

ここまでの試算は一例です。実際は、給与額にしても、年金額にしても平均値はもっと低いものです。

「だから、やっぱり自分には当てはまらない」

――ここまで来てそう思いますか。今回の改正は、あくまで高齢者が働きやすくするものです。いっぱい働いて厚生年金保険料を納めてください、という国の思惑もあるでしょう。そして、この制度維持のためには、厚生年金加入者全体の保険料アップも今後考えられます。

そもそも、年齢で線引きされる賃金体系に疑問を感じることもあります。「もっと働きたい」というより「働かざるを得ない」のが現状でしょう。 

でも、まずは「制度を正しく知って、納得できる選択をする」ことが重要だと思います。

今回言いたかったこと――

・収入の違いは確かにとても大事。

・それ以上に手取りの差はもっと大事。
・でも、その差が自分の人生にどれだけの違いがあるか?
・どう働きたいか、どれだけの収入が必要か。

・収入だけを考えて、何かを犠牲にしていないか。
その判断材料として、この動画が役に立てば嬉しいです。

 (2026.06)

  

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