プロスペクト理論

 

 行動ファイナンスで最も基本的で有名な理論が、「プロスペクト理論」です。 

 合理的な投資家の効用関数とは、不確実な状況において期待される効用を最大化するように行動するとされます。効用関数とは、リスク回避的な合理的な投資家の効用は、相対的な利益が増加するにしたがって、その効用(価値)の増し分は低減していくというものです。

 

 図を見てみましょう。図の右上の部分で、横軸に相対的な利益の大きさ、縦軸に価値の大きさを現します。相対的な利益が「1」の時の効用(価値)の大きさに比べ、相対的な利益が「2」の時の効用(価値)の大きさは小さくなっていきます。このように、相対的な利益が大きくなるに従って、投資家の満足度は低下していきます。 

 

 株価が1,000円から1,100円に上昇した時の満足度は、株価が1,100円から1,200円に上昇した時に比べ、同じ100円の上昇でも大きく、逆にいえば、株価が1,100円から1,200円に上昇した時の満足度は、1,000 円から1,100円に上昇した時に比べ、低くなっていくということです。 

 

  この図では、相対的利益は中心点(リファレンス・ポイント)を起点として、その大小が比較されます。たとえば、購入した時の株価が1,000円であれば、この1,000円がリファレント・ポイントとなります。 

 

 次に、左下の部分を見てください。横軸の左にいくにしたがって損失が大きくなっていきます。相対的な損失が「-1」の時の効用(マイナスの価値、つまり不満足度)は、相対的な損失が「-2」の時の効用よりも大きくなっています。これは、相対的な利益(右上の部分)の効用関数の逆のパターンです。 

 

 しかし、その効用の大きさは、プラスの価値の場合に比べ大きくなっています。レファレンス・ポイントから「1」と「-1」では、効用の大きさは、「-1」の相対的な損失の方が大きくなっています。このことは、利益が出ている時の満足度より、同じ程度の損失が出ている時の不満足度の方が大きいということです。

 

 つまり、同じ100円でも100円の利益(株価1,100円)に上昇した時よりも、100円の損失(株価900円)に下落した時の方がその衝撃度は優っていることになります。このことから、投資家が、必要以上に元本割れを嫌ったり、株価が下落しても損切りできない(損失を確定できない)で、株価が回復するのを待つという投資心理が理解できます。

 (2014.08.29)

 

 

 

 

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