老後資金不足のための年金対策

1.資金不足のための年金対策

 

すでに定年退職を間近に控えた50代後半の対策を考えてみましょう。この場合は、年金受給についての直接的な対策が中心になってきます。

 

①「年金の繰上げ」は、本来65歳からの老齢基礎年金を60歳から64歳の間で受給する方法です。 

②「年金の繰下げ」は、逆に本来65歳からの老齢基礎年金・老齢厚生年金を66歳から70歳の間で受給する方法です。(2022年からは75歳まで繰下げが可能となりました。) 

③「60歳代前半の在職老齢年金」は、60歳から64歳の間で就労した場合に、

また

④「60歳代後半の在職老齢年金」は、65歳から69歳の間で就労した場合に、それぞれ給与額によって年金額が調整(カット)される仕組みです。 

⑤「高年齢雇用継続給付」とは、60歳から64歳の間で就労した場合、給与の額が一定以上減少したときに給付がある仕組みです。 

⑥「遺族給付」と

⑦「障害給付」は、夫が死亡または重度の障害にあったときにもらえる年金です。 

⑧「年金と失業給付の調整」とは、60歳以降退職して公的年金を受給する代わりに求職活動をする期間に失業給付をもらうことです。 

⑨「配偶者の厚生年金」は、妻が厚生年金の被用者として勤務した場合にもらえる年金を生活資金に加算することです。 

⑩「付加年金と国民年金基金」は、早期退職して国民年金に加入し、国民年金の上乗せ分としてどちらかに任意加入できる年金です

 

  

2.年金繰上げの仕組み

 

年金の繰上げ方法には、「全部繰上げ」と「一部繰上げ」があります。65歳からの老齢基礎年金を60歳に繰上げする場合を見てみましょう。

 

「全部繰上げ」とは、64歳からの特別支給の老齢厚生年金(定額部分)を支給停止して、代わりに65歳からの老齢基礎年金を減額率(30%)で減額した上で60歳に繰上げる方法です。この場合、 65歳以降の老齢基礎年金は、同じ減額率(30%)で減額された年金額です(図は定額部分がない場合)。

 

簡単なイメージとして、全部繰上げは、「特別支給の老齢厚生年金(定額部分)」を全部なくして年金空白期間を埋める方法です。

  

  

3.年金繰下げの仕組み

 

老齢年金を70歳まで繰り下げると、65歳の受給開始時の年金額より42%増額された年金額を生涯もらうことができます。繰下げは老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに可能です。この年金対策ための条件を考えてみましょう。

 

65歳からの期間を年金受給なしで生活していけるためには、65歳から70歳の5年間、あるいは75歳までの繰下げ可能期間において生活資金に余裕がなければなりません。これは早い時期からの積立や運用、個人年金や確定拠出年金等の拠出によって準備されるものです。あるいは、企業によって準備される企業年金や退職一時金・退職年金なども、早い時期に把握しておくことが必要となります。

 

このような準備ができ、受給者本人が健康で長生きの見込(予測寿命)があれば年金繰下げで受給開始を遅らせても、その分増額された年金を生涯受けることにより、退職後の生活資金の不足を埋める対策になります。

 

なお、繰下げ受給額は年金の受取累計額で見ると、受給開始年齢から約12年目(70歳繰下げでは82歳)で65歳年金受給者の受取累計額を追い越します。つまり、ほぼ82歳以上生きられる人の場合は生涯受給額の面で優利となります。(公的年金は終身受給です。)

 

   

60歳代の在職老齢年金(働きながら年金をもらう)

4.60歳代の在職老齢年金

 

60歳代で定年退職後も厚生年金被保険者となって働く場合、厚生年金支給額が調整される年金のことを在職老齢年金といいます。繰上げした老齢基礎年金は対象外です。

 

在職老齢年金とは、「加給年金を除く年金の額」が一定条件のもとに支給停止されることです。この減額対象となる厚生年金の月額を「基本月額」といい、次の式になります。

 基本月額=年金の額(加給年金を除く)÷12

 

在職老齢年金は、「総報酬月額相当額」と「基本月額」の合計額によって、支給停止される額が異なってきます。基本的な考え方は、

「(年金+給与)が47万円(※)を超えると超過分の半分の年金額がカットされる」ということです。

 

年金支給停止額の計算方法(2022年4月以降の受給)は、

総報酬月額相当額と基本月額の合計額が47万円以下」

であるかどうかによって分かれてきます。

 

①「総報酬月額相当額と基本月額の合計額が47万円以下」であれば、年金額は減額されず、全額支給されます。

②「総報酬月額相当額と基本月額の合計額が47万円超」の場合は、

 基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

の年金額が支給停止となります。

 

60歳代で給与30万円/月(賞与なし)で働いた場合をもとに在職老齢年金を計算してみましょう(高年齢雇用継続給付に該当しないものとします)。

本来の老齢厚生年金の報酬比例部分の月額(基本月額)を18万円とすると、総報酬月額相当額30万円と基本月額の合計額は48万円で47万円超です。したがって年金支給停止額は、

 

「(総報酬月額額+基本月額-47万円)÷2」の式から

{(30万円+18万円)-47万円)}÷2=5,000円

となります。

 

基本月額が18万円ですから、厚生年金受給額は17.5万円(18-0.5)となります。 

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