図解でわかる現代ポートフォリオ理論

5. CAPM(資本資産価格モデル)

 ●市場ポートフォリオ

 

すべての投資家がこれまで説明したポートフォリオ理論に従ってポートフォリオを組んだと仮定したとき、市場のリスク証券の価格はどのように形成されるでしょうか。この資産の価格形成を説明する最も重要なモデルが「CAPM(キャップエム Capital Asset Pricing Model)資本資産価格モデル」と言われるものです。

 

無リスク証券を含めたポートフォリオでは、すべての投資家は最も最適とされる同一のポートフォリオを市場において持つことになります。このポートフォリオを「市場ポートフォリオ」といい、無リスク証券と市場ポートフォリオを結ぶ線を「証券市場線」と呼びます。つまり、CAPMの理論によると、すべての投資家が最適なポートフォリオを持つと、それが「市場ポートフォリオ」になるということです。

 

ところが、実際の個別証券においては必ずしも標準偏差と期待収益率の間に整然とした関連性がある場合ばかりではありません。そこでCAPMでは、リスクである標準偏差の代わりに、市場に対する感応度、あるいはリターンを生むリスクとして「ベータ(β)」を使い、リターンとベータの間に整然とした関係が現れると考えています。

 

CAPMにしたがえば、すべての個別証券あるいはポートフォリオは証券市場線に位置することになります。証券市場線上にない証券は、一時的に誤って価格付けされていることになります。たとえば証券Aは、証券市場線より上にあります。これは証券Aの期待収益率が証券市場線の期待収益率より上回っている(割安)ことを示しています。したがってAの収益率は、時間の経過とともに証券市場線上の均衡収益率に収斂されていくものと予測されます。また、証券Bは、証券市場線より下にあります。証券Bの期待収益率が証券市場線で均衡している期待収益率より低い(割高)ため、Bの収益率は、時間の経過とともにやはり証券市場線上の均衡収益率に収斂されていきます。この場合、証券Aに投資すれば将来の価格が上昇することが期待でき、逆に将来の価格が下落すると予測される証券Bを売却する投資戦略をとることが可能となります。  

  

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