11.保有効果

 投資価格 

■保有と売却の心理的行動 

 

●自分が保有しているものは高く価値づける

ここでは、人が投資行動に向かう際の投資対象の価格付けと心理的行動について取り上げます。それは行動経済学で「保有効果」(Endowment Effect)と言われるものです。 

 

人には、自分が保有している物は基本的に手離したがらないという心理があります。手離すことに心理的抵抗感を持つからです。所有者本人は買い手の何倍かの評価で自分の物を価格付けしています。そして保有していること自体に充足感があります。それでいて、すでに保有した物には徐々に関心が薄れていくというのは保有するまでが最大の関心事だったからであり、新たな保有心理がもたげてくると次の対象物に向かうからです。

例えば骨董収集家は、自己の主観的審美眼で骨董品を買い求めています。その尺度の客観性を求めて鑑定依頼を出したりします。本人には絶対的な価値尺度がないからでもあり、自分が保有している品は常に買い手が求める値の数倍の価値があるべきだ(あってほしい)という欲求を保証してもらいたいからです。
 

 

一方、投資価格は常に相場で開示されていて、自分の保有証券が他の証券より高いか安いかは一目瞭然です。そこで、安く買って高く売れば利益が出る。それゆえ証券を買った投資家は、保有した瞬間から儲かるか損するか、日々刻々気になり出します。

骨董収集と投資の心理の違いは、ここにあります。収集家は「購入直前」までが心理的高揚の絶頂にあり、反対に投資家は「購入直後」から心理的に高揚せざるを得なくなります。前者は保有することに心理的重点が置かれているのに対して、後者は売却、しかも高い価格で売却することに心理的重点が置かれているからです。
 

 

●保有することを楽しむ骨董収集家

仮に投資対象に「適正価格」があったとしても、相場ではその価格通りになりません。だから損する人と儲かる人が出るのです。そういう意味では、株式は壺や絵画と同じです。違うとすれば、骨董収集家が鑑定で大損したことがわかったとして(万円で買った骨董が1千円の鑑定額というのは珍しくない)、落胆があってもさほど悲壮感がないのは、保有のための収集を純粋に楽しんでいる過程にあるからで、その「楽しみ代」を享受できるからなのでしょう。 

 

一般投資家もまた、売却するまでは証券を保有していることになります。であれば、骨董収集のように投資にも保有の楽しみがあっていいのではと思えます。自分が保有しているもの(証券)は、他人のものよりも高価となる(べきだ)という楽しみ。ただし、大損していいわけではありません。 

 

そうなると、投資家は自分が「購入」し自分が「保有」しているがゆえに毎日毎刻、値動きが気になってきます。そして、価格が上がったり下がったりするのを毎日何度も見ているうちにその変動に怖気てきて、必要なリスクも取りたがらなくなってきます。 

 

短期間と長期間のチャートを見せられると、同じ証券でも短期間で見た人の方が、リスクを過小に取ると言われます。価格というのは、こんなにも短期で乱高下するものかと思った人と、長期の間では価格の山と谷がならされてなだらかな上昇下降線をたどると思った人では、適正なリスクの取り方や投資の仕方もだいぶ違ってくるというのです。 

 

●価格にとらわれすぎない投資

運用の専門家や愛好家は別として、一般の投資家は頻繁に価格の騰落を見すぎるとポートフォリオの配分がやたら気になってきます。では、どうしたらいいでしょうか。それは個人が各自のライフプランから導き出された適正なリスクを取って、適正なリターンが期待できるポートフォリオを組めばいいのです。  

 

それには、インデックス投資によるポートフォリオが有効な手段となりえます。インデックスとは市場の価格であって、主観的評価が入りにくい。つまるところ、上げるも下げるも「市場がそうなっている」となれば諦めもつくし、気も楽になる。そうすると、骨董のように保有する愛着も出てくるでしょう。

 

価格に捉われすぎた運用は、それが楽しみという人は別として、価格を見ている(気にかけている)その分の機会時間だけ、人生の有意義な別の楽しみを犠牲にしていると言えるのかもしれません。私たちには、価格よりももっと見ておきたいものがいっぱいあるはずなのにと思えます。

 

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