●希望の仕事に就けない
定年後も働く場所があればまだいい方です。深刻なのは、60歳きっかりで仕事がない場合です。
何らかの理由で雇用延長できなかった完全リタイア組は、公的年金受給が始まる65歳まで無収入であれば退職金や貯金を取り崩していくしかありません。5年間の無収入期間(年金空白期間)の「収入の機会喪失額」、つまり本来得られるべき収入が入ってこなくなる金額は、仮に定年時の収入を月額50万円とし雇用延長後の月収をその5割とすると、1,500万円(25万円×12か月×5年)にもなります。
国は、このような「年金空白」世代をなくすために高齢者の雇用延長制度を義務付けたのですから、誰でも60歳以降も同じ企業で働き続ける権利があるわけです。しかし、この制度では収入減もさることながら、必ずしも本人が希望する仕事に就けるとは限りません。
60歳過ぎて無収入でも安泰な人というのは、現役時代に高額収入、高額貯蓄、高額退職金の人に限られます。60歳以上で継続雇用となっても同一企業・同一職種に就けるのは5割程度と言われています。同一企業だからといって、60歳過ぎても希望の職種と収入にありつける人はわずかと言われています。むしろ配置換えや職種換えで意に沿わない仕事、今までとは逆転した上下関係の立場などでストレスをため、雇用延長しても1~2年で最終定年を決意せざるを得ない人も出てきます。同一企業以外の会社に再就職する場合は、就業機会はもっと狭まるでしょう。
●働く場所と収入を確保する
60歳以降の給与収入減については雇用保険法の「高年齢雇用継続給付」があります。これは、60歳時点の給与に比べて60歳以降の給与が75%未満に減額すると最大15%の給付が見込めるものです。よく知られていませんが、この制度では年金法による一定額の年金停止と合わせ技となりますが、給与収入減の多少の歯止めとなるものです。
老後も会社に頼らず独立・起業する人は別として、一般のサラリーマンとしては、たとえ給与収入が半減したとしても働く場所と収入があることに満足しなければならないのでしょうか。むしろ現役時代のように頑張りすぎず残業もせず、ストレスを抱え込むこともなく、心や体に余裕を持って残りの会社生活や人生を楽しむ程度の気持ちでいた方がいいということになるのでしょうか。もちろん、そのためには生活に窮しない程度のお金があれば、ということです。
問題は、60歳代前半で平均的な世帯収入の月収20~30万円で、いかに貯蓄を減らさずに生活していくかです。
→ 対策を考えよう 「ブログ New Street」