年金改正 成立! 遺族年金見直しで、給付がこんなに減ってしまう?

 

年金制度改正について、この動画では第3弾、遺族年金の見直しを取り上げます。

 今回の年金改正で、あなたが受け取れる遺族年金が2000万円も減る、となったらどうします? しかも影響を受けるのは、30代の女性、近い将来40代、50代になる女性も含まれます。

「それって、本当ですか?」・・・ これは年金の遺族保障が5年しかもらえない時代になる、そういう話です。それでは、これから検証していきましょう。

  

■誰が対象なの? 改正スケジュール

今回の改正は、「自分にはまだ先の話」と思っている人にこそ、実は一番影響します。

たとえば、女性で35歳の時に夫が亡くなった場合、30年間でもらえる遺族年金は約500万円も減る可能性があります。このシミュレーションは後で説明します。

 その前に肝心な改正スケジュールです。

2028年が施行年度で、そこから5年ごとに改正の給付対象の年齢が上がっていきます。

「それなら、2029年以降に40代になる私は関係ない?」・・・それは勘違いです。

施行後5年で45歳まで、10年で50歳、15年で55歳と対象年齢は上がっていき、20年でこの改正は完結します。このスケジュールを見て、ご自分が何年後に該当するか確認しておくことが必要ですね。

 夫の場合は、段階的な対象年齢はありません。

 

改正で影響ない人、影響ある人は誰?

 逆に、今回の改正で遺族厚生年金に影響のない人は誰か? 次の人です。

   改正前から遺族厚生年金を受け取っていた方

   60歳以降の妻・夫

   18歳未満の子どもがいる妻・夫

   2028年度に40歳以上になる妻

 これらに該当する人は、とりあえず今までと変わりなく受給できます。ただ、

少し補足が必要です。③は、「子」が18歳以上になった後は「子のない妻」と同じ扱いになりますから、大きな影響があります。

 

 「2028年度に40歳以上になる妻」って誰のこと?

 また④は、

202841日時点で40歳以上になる女性」のことです。この人たちは、新制度の5年有期給付の対象にならないという意味です。

つまり

1988年度(昭和63年)以前生まれの女性です。この人たちは、現在(2025年)時点で37歳以上です。

 逆に改正の対象となるのは、

2028年度時点で3039歳の女性(19891998年度生まれ)、現在の年齢でいうと、おおむね2736歳の女性です。さらに「18歳未満の子のない配偶者」は大きな影響があります。

 

遺族厚生年金の見直しで何が変わる?

 そこでコアの対象となる30歳以上の「18歳未満の子のいない妻」に絞って話を進めていきたいと思います。

●改正前は

・配偶者である妻には遺族厚生年金が無期給付です。

・夫は55歳まで受給権がなく、60歳から無期給付です。

 それが

●改正後は

 ・前提として、配偶者の収入が850万円以上でも受け取れるようになりました。そのうえで

 ・60歳未満の配偶者(妻・夫区別なく)は、遺族厚生年金が5年間の有期給付となります。

 ・60歳以降は無期給付となります。

この改正で一番大きなところは、妻は無期給付だったのが5年の有期給付になることですね。もともと30歳未満は5年給付ですが、これが30歳以上の配偶者も適用となるのです。

 無期と5年では、その金額差はかなり大きいはずです。でもここで、減額を緩和するための措置として、給付加算と配慮措置があります。それは、どういうものか?

 

緩和措置としての給付加算と継続配慮措置

 これには主に3つあります。

 1つ目は、有期給付加算・・・・亡くなった配偶者の老齢厚生年金相当額の一部を上乗せします。これは、5年有期給付の約1.3倍と想定されています。

 2つ目は、配慮措置・・・・①障害状態にある人や②収入が十分でない人には、5年給付後も引き続き増額された給付額を受給できるというものです。

その収入要件は、単身の場合で月額約10万円(年間約122万円)以下の人が、引き続き増額された給付額を受給できることになります。これが最長65歳まで継続されます。

ただし、これ以上の収入になると、増えた額により給付額が調整されて、おおむね月収20万円~30万円になると、この配慮措置は停止されます。 

3つ目、死亡分割の給付です・・・・亡くなった配偶者の厚生年金記録を分割し、遺族の記録に上乗せし65歳以降増額させるものです。離婚の年金分割と同じ考え方ですね。

「おや、これなら無期給付とあまり変わらないかな?」…と思われる方もいるかもしれませんね。

それは、本当のところはどうなのでしょう。

 

「子」のいるケースはどうなる?

それを見る前に、ここまでは「子のいない」ケースでした。「じゃあ、『子のいる』配偶者はどうなる?」・・・これも気になりますね。

現在「子」がいても、子が18歳以上になれば「子のいない」配偶者と同じ扱いになります。つまり、子が18歳年度末になるまでは現行通り。加えて、遺族年金の面では、子の加算額が年間約23.9万円から年間約28.1万円に増額となります。

今18歳未満の子がいれば、その後ずっと無期給付になることは違いますので、そこは注意が必要です。

 

実際に試算してみた

 では、実際に改正でどう変わるのか。冒頭でも言いましたが、意外な結果が出てきます。

 前提条件は次のとおりです。

  • 妻:35歳・パート年収100万円
  • 夫:37歳で死亡・平均標準報酬額40万円
  • 婚姻期間5年、子なし
  • 妻の遺族年金受給期間:最長35歳〜65歳(30年間)とする

 

改正前と改正後の比較

●改正前の遺族年金

  • 遺族厚生年金(年額):約49.3万円/年
  • 合計受給額(30年間):1,479万円(中高齢寡婦加算なし)

※85歳までの無期給付(50年間)だと :約2,465万円


●改正後の遺族年金(5年給付+配慮措置給付)

  • 最初の5年間(年額1.3倍と想定):約64.1万円/× 有期給付5 =320万円
  • 配慮措置(年額64万円想定 × 25年):1,600万円

※最長65歳までの給付とします。

 合計受給額(最長65歳まで30年間):1,920万円

 このケースは、妻が低収入で配慮措置がある場合です。給与収入がおおむね20万円以上になれば配慮給付はありません。その額は、試算したとおり約1600万円です。これがもらえなくなります。相当な金額ですね。

 

夫の死亡後、受給総額はどうなる?

 これを見てどう思われますか? 

 65歳までの受給額だけを見れば、改正前と改正後では、440万円、改正後のほうが多くなります。これは、増額給付の要件をすべて満たした場合です。しかし、それは65歳までの話です。

 寿命85歳を考えたら、改正後は逆に545万円も少なくなります。

 65歳からは自身の基礎年金は満額で約7万円のみ。今と同じ収入のままでは厚生年金もあまり期待できません。65歳からの死亡分割加算にしても、婚姻期間が短いのでわずかな金額でしょう。

 しかも、あくまで低収入の方のケースです。配慮措置の給付がない人は、先ほどのケースで、最初の5年給付額約320万円のみです。寿命85歳までで比べたら、改正前の2465万円からこれを差し引くと2145万円の減額となります。もっとも、本人の給与収入が増えれば、この減額分をカバーすることが可能です。

 

今からできることは?

 これは、ちょっと衝撃的な数字ですね。もし、こういう状況になったら、5年で立ち直れますか? ・・・それでは、今からできることを3つ挙げておきたいと思います。

 まず、遺族年金改正以前にも、夫の万一に備えて

   生命保険を掛けていることと思います。先ほどのざっくりした試算でも、最低でも500万円くらいの見直しは必要となります。それから、ここは注意してほしいことがあります。

配慮給付の継続ラインは年収122万円(月10万円)ですが、収入がこのラインを超えた人は、生涯収入と支出のバランスで改めて保障額を見直す必要があります。先ほど見た遺族厚生年金の2145万円の減額が単純に必要保障額の不足となるわけではないということです。これは抑えておいてくださいね。次には、

   今後の働き方を変えて、厚生年金受給を前提に収入アップの仕事に就くことが視野に入ってくるでしょう。さらに、夫が生前中、収入に余裕があるうちに、

   iDeCoなど積立運用もしていければいいかと思います。

 以上、このような場合の詳細なシミュレーションは、FPなど専門家にご相談ください。

 

(2025.06) 

 

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