定年後の働き方はギア・チェンジが必要

 人はある一定の年齢が訪れたら自分の立場を知る必要があります。それは、とても重要なことです。おそらく、能力があって権力があった人ほど、それに気づかない。また、周りがすぐには気付かせてくれない。

 

 今は、「高年法」(高年齢雇用安定法)で60歳でいったん退職扱いとなっても、本人が望めば法令上は65歳まで働けるようになりました。もちろん、一度定年退職しているので退職金(退職年金)はもらえますが、給与体系も変更されて減額します。それは仕方ありません。問題は、意識面です。能力があると言われてきた人、自分でも能力があると自負してきた人ほどギア・チェンジができていません。頭でわかっていても、立場が変わったと理解していても、本人は納得していません。

 

 「俺はまだ一線でやれる」「なんでこいつの指示で動かなくちゃならんのだ」
 おそらく再雇用(再就職)された人は、心の中でそう叫んでいるんじゃないでしょうか。でも、それは仕方がないんです。一度は定年退職を迎えたのですから。たぶん本人が思う通り、仕事は人よりもできるだろうし、能力だってなまじ年下の部下たち(その中には今の上司となっている人もいる)に劣っているわけではないでしょう。しかし、もうその立場での存在としては必要とされていないのです。それは能力とは関係ありません。

 

 会社の中の環境がそのように求めているのです。「もう、お呼びでない」ということです。定年退職したら、あるいはこれから定年退職する人は、そのことに早く気付くべきです。それは、再雇用で会社に残ろうが、退職して違う会社に再就職しようが同じです。会社は、次の人に仕事と責任を任せていかなければならない。いつまでもリタイアした人に「そこ」に居てもらっては困るのです。「そこ」は、次の人の席なのですから。たぶん、このことを早く悟れない人ほど不幸になる確率が高くなるかもしれません。もっとも、遅かれ早かれ、周囲がその人をそれなりに扱うので、本人もやっと気づいてくれるものですが。

 

 これが大方の現実です。定年退職者をいたずらに貶めるつもりはありません。会社に頼らず、自分で仕事を見つけてきて自分でこなしてやっていける人は幸いです。そういう人たちは、たいがい「この日」のために何年かかけて準備してきた人です。

 

 60歳になったら、一度ギア・チェンジしなければなりません。それもギアをアップするのではなく、ギアをダウンしなければなりません。会社の中では、一定の役目を終えた人がいつまでもトップ・ギアでパタパタ動き回られては困るのです。「居て欲しくない」存在であることをわきまえなくてはなりません。なにも、自分を卑下しろなどと言うつもりはありません。会社での役割がそのようになっただけなのです。あとは仕事やお金のためだけでなく、自分の生きるテーマを追い求めるか、ボランティアに徹して歓びを感じる、あるいは趣味・娯楽に没頭するかです。

 

 「いや、自分はまだばりばり仕事して稼ぐんだ」と言うなら、自分で事業を起こすことです。自分が主役なのですから、誰もあなたを煙たがったり、追い出したりしません。なにしろ、あなたがいないとやっていけないのですから。今の会社にしがみつき年下の元部下に指示されるもよし、自分で必要とされる自分をつくっていくもよし。間違っても、今いる会社でギアをアップにテェンジしてはいけません。

 

 再就職するにしても、自分の能力なら今までと同じくらいの給料で仕事が探せるなどと思わわないほうがいいでしょう。それは能力の問題ではなく、会社の事情という問題なのです。考えてみてください。同じ仕事で同じ給料なら、誰が60歳過ぎの「おっさん」をわざわざ雇わなくてはならないのでしょうか。若い女性でできる仕事なら若い女性の方が社内が明るくなるし、若手の男性にできるものなら将来も任せていきたいと会社は考えます。

 

 だからといって、肩を落とすことはありません。とにかく、60歳まで一区切りつけて勤め上げてきたではないですか。それだけでも立派なことです。これからは、違う世界が見えてくるはずです。お金がないというならば、プライドなど捨てれば、給料が半分以下になろうともやれる仕事はありそうです。もっとも、お金のことを考えずに済むなら、本当にやりたいことをやるのがいちばんです。

 

 高齢者の活用が必要などと言われていますが、まだまだ現実は、自分で自分の道をかき分けていかなければならないようです。

2014.09.17

 

 

 

 

 

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