9. 事業承継設計

図解一覧
●項目別の図解については、別ファイルの「図解暗記レジュメ」(各章)をダウンロードしてご利用ください。
9. 事業承継設計【図解一覧】.pdf
PDFファイル 642.5 KB

1. 取引相場のない株式評価の流れ 

(2015-11,2015-06,2014-06) 出題「非上場株式の評価(原則的評価方式・特例的評価方式)」

 

l  Point

 

 取引相場のない株式の評価は、株式取得者の区分、会社規模区分の判定、特定会社の判定の流れに沿って、評価方式が決定する。

 

(1) 取引相場のない株式  

 株式取得者の区分  

取引相場のない株式(未公開会の株式、自社株)の評価は、株式の取得者が会社に対する経営支配権を有するかどうかによってその評価方式が異なります。 

a) 経営支配権がある(同族株主等) 

経営支配権を有する者が取得した株式については、評価する「会社規模区分」に応じてその評価方式が異なってくる。 

b) 経営支配権がない(同族株主等以外) 

経営支配権のない者が取得した株式については、原則として「会社規模区分」とは関係なく会社の配当実績により評価する(配当還元方式)。

 

 会社規模区分の判定 

会社規模に応じて採用できる評価方式が決められています。(3. 「会社規模区分と評価方式」) 

 

 特定会社の判定 

特定会社とは、次の会社をいいます。 

Ÿ   土地保有特定会社 

土地及び土地の上に存する権利を一定割合以上保有している会社。 

Ÿ   株式保有特定会社 

株式及び出資を一定割合以上保有している会社。 

a) 特定会社に該当しない場合 

原則的評価方式(類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式)により評価する。 

b) 特定会社に該当する場合 

会社区分にかかわらず原則的評価方式(純資産価額方式)により評価する。

 

 

 

 

2. 会社の評価方式の判定 

(2015-11,2015-06,2014-06) 出題「同族株主の範囲」 

 

l  Point

 

会社の評価方式の判定は、まず同族株主がいるかどうかを判定する。同族株主とは、株主の1人とその同族関係者の有する議決権の合計数が議決権総数の30%以上を占める場合のその株主とその同族関係者をいう。

 

 一般の会社の評価方式の判定は、レジュメの表の流れとなります。これをまとめた表が以下のものです。 

 

区分

株主の態様

評価方式

同族株主のいる会社

同族株主

議決権割合が5%以上の株主

原則的評価方式

議決権割合が5%未満の株主

中心的な同族株主がいない場合

中心的な同族株主がいる場合

中心的な同族株主

役員である株主または役員となる株主

その他の株主

配当還元方式

同族株主以外の株主

同族株主のいない会社

議決権割合の合計が15%以上の株主グループに属する株主

議決権割合が5%以上の株主

原則的評価方式

議決権割合が5%未満の株主

中心的な同族株主がいない場合

中心的な株主がいる場合

役員である株主または役員となる株主

その他の株主

配当還元方式

議決権割合の15未満の株主グループに属する株主

 

(1) 同族株主 

 同族株主とは、株主の1人とその同族関係者の有する議決権の合計数が議決権総数の30%以上を占める場合のその株主とその同族関係者をいいます。 

 なお、50%超所有している株主グループがある場合、30%以上50%未満の株主グループは同族株主にはなりません。 

 

(2) 中心的な同族株主 

 本人、配偶者、直系血族、兄弟姉妹及び一親等の姻族(これらの者の所有する議決権の数がその会社の議決権総数の25%以上である会社を含む)の有する議決権の数がその会社の議決権総数の25%以上である場合のその株主をいいます。

 

(3) 中心的な株主 

 同族株主のいない会社で議決権割合が15%以上であるグループのうち単独で10%以上の議決権を有している株主をいいます。

 

 

 

 

3. 評価方式と会社規模区分 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06)  出題「非上場株式の評価(原則的評価方式・特例的評価方式)」 

 

l  Point

 

取引相場のない株式の評価方式には、原則的評価方式と特例的評価方式がある。原則的評価方式には、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式がある。

  

(1) 評価方式の種類 

 取引相場のない株式の評価方式には、原則的評価方式と特例的評価方式があります。 

 原則的評価方式には、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式があり、特例的評価方式には配当還元方式があります。 

 

 原則的評価方式 

a) 類似業種比準方式 

評価会社と事業内容が類似する上場企業の株価、配当、利益、簿価純資産をベースに自社株を評価する方式。 

b) 純資産価額方式      

所有資産の相続税評価額ベースの純資産価額により自社株を評価する方式 。 

c) 併用方式 

上記2方式の加重平均値により評価額を算出する方式 。 

 

 特例的評価方式 

Ÿ   配当還元方式   

  2年間の配当実績値に基づき自社株を評価する方式。 

 

(2) 会社規模区分と評価方式 

 原則的評価方式による場合、会社規模に応じて採用できる評価方式が決められています。 

 原則的評価方式のうちの「併用方式」については、会社規模区分に応じて「類似業種比準価額」と   「純資産価額」の折衷割合が決められています。 

 会社規模が大きいほど類似業種比準価額を使用する割合が大きくなります。類似業種比準価額よりも「純資産価額」のほうが低い場合は、会社規模にかかわらず純資産評価額を評価額とします。 

「特定会社」に該当する場合は、会社区分にかかわらずすべて「純資産価額」により評価します。 

 

 大会社      ・・・・ 類似業種比準価額

 中会社

a) 中会社の「大」・・・・「類似業種比準価額×0.90+純資産価額×0.10

b) 中会社の「中」・・・・「類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25

c) 中会社の「小」・・・・「類似業種比準価額×0.60+純資産価額×0.40

 小会社      ・・・・「類似業種比準価額×0.50+純資産価額×0.50」と「純資産   

               価額」の低い方

  

 なお、同族株主等の議決権割合が50%以下のときは、「純資産価額」は80%を乗じた額となります。

 

 

 

 

4. 類似業種比準方式 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「非上場株式の評価(原則的評価方式・特例的評価方式)」

 

l  Point

 

類似業種比準方式とは、事業内容が類似する上場企業の業種の株価をもとに自社株を評価する方式で、評価会社と類似業種の配当、利益、純資産の3要素を比較して算出する。

  

(1) 類似業種比準方式 

類似業種比準方式とは、事業内容が類似する上場企業の業種(「類似業種」)の株価をもとに自社株を評価する方式です。 

評価会社と類似業種の以下の3要素を比較して算出した比率に類似業種の株価を乗じ、さらに斟酌率を乗じて評価をする会社の株価を算出します。 

 1株当たり配当金額 

 1株当たり年利益金額 

 1株当たり純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)

 

【算式】 

 類似業種比準方式の株価(算式は問題文中に記載される)

 

 

A×(b/B+c/C×3+d/D)÷5×E×(1株当たりの資本金等の額÷50円)

 

 

A・・・・類似業種の株価

B・・・・類似業種1株当たりの配当金額

C・・・・類似業種1株当たりの年利益金額

D・・・・類似業種1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)

b・・・・評価会社の1株当たり配当金額

c・・・・評価会社の1株当たり利益金額

d・・・・評価会社の1株当たり純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)

 

 E=斟酌率・・・・大会社0.7,中会社0.6,小会社0.5

  

(2) 類似業種比準方式の特徴 

 業績が良い会社は株価が高くなる(利益、配当、純資産価額の上昇に応じて株価も上昇)。 

 類似業種の株価の上昇により株価が高くなる。 

 資産の含み益は株価に反映しない。 

 

【計算】 

甲社の類似業種比準価額はいくらか。

 

(評価会社:甲社)

   大会社に該当(斟酌率0.7

   1株当たりの資本金等の額 : 500

   甲社の1株当たりの比準要素

・年平均配当金額          5.0

・年利益金額         15

・簿価純資産価額         80

 

(類似業種)

・配当金額          4.0

・年利益金額          20

・簿価純資産価額        200

・株価             220

 

 1株当たりの類似業種比準価額

 

 220円×(5.0/4.015/20×380/200)÷5×0.7×500/501,201.1

 

 

 

 

 

5. 純資産価額方式 

(2015-11,2015-06,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「非上場株式の評価(原則的評価方式・特例的評価方式)」

 

l  Point

 

純資産価額方式とは、課税時期における相続税評価額ベースの純資産価額をもとに自社株を評価する方式である。

 

(1) 純資産価額方式 

純資産価額方式とは、課税時期における相続税評価額ベースの純資産価額をもとに自社株を評価する方式です。相続税評価額による純資産価額から資産の含み益に相当する部分の法人税等相当額{(相続税評価額-簿価)×45%}を差し引いて計算します。

 

【算式】 

 純資産価額方式の株価

   =[(AB)-{(AB)-(CD)}×45%]÷E

 

 A ・・・・ 課税時期現在の相続税評価額による総資産額

 B ・・・・ 課税時期現在の相続税評価額による負債額

 C ・・・・ 課税時期現在の帳簿価額による総資産額

 D ・・・・ 課税時期現在の帳簿価額による負債額

 E ・・・・ 課税時期現在における発行済株式数 

  

(2) 純資産価額方式の特徴 

 土地、借地権、有価証券等の含み益が株価に反映します。 

 

 

 

 

6. 配当還元方式 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「非上場株式の評価(原則的評価方式・特例的評価方式)」

  

l  Point

 

 配当還元方式とは、2年間の会社の配当実績の平均額に基づき株価を算出する方式である。

 

(1) 配当還元方式 

配当還元方式とは、会社の配当実績(2年間の平均額)に基づき株価を算出する方式です。会社経営権のない同族株主等以外の株主の場合に適用します。

 

【算式】 

 配当還元方式の株価

=(年配当金額÷10%)×(1株当たりの資本金等の額÷50円)

 年配当金額は1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額とする。また、年配当

 が250銭未満または無配当の場合は、年配当金額を250銭として計算。

 

上記算式により算出した金額が、原則的評価方式によって計算した価額を超える場合は、原則的評価方式によって計算した価額とします。

 

【計算】 

1株当たりの株式の価額はいくらか。

 

   資本金等の額     5000万円(発行済株式10万株)

   150円当たりの配当金額

・直前期              10円(普通配当)

・直前期の前期       12円(普通配当)

             8円(記念配当)     

   原則的評価方式を適用して計算した1株当たりの価額   1,200

 

 1株当たりの配当還元価額の計算

1株当たりの年平均配当金額の計算

 (1012÷211

・配当還元価額の計算

=(11円÷10%)×(500円÷50円)=1,100

・原則的評価方式による評価額との比較

    1,100円<1,200

 したがって、1株当たりの株式の価額は1,100円。

 

 

 

 

7. 自社株設計 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「自社株(非上場株式)の評価引下げ対策」

 

l  Point

 

事業承継としての自社株設計には、株価準備、株数準備、納税準備の3つのSTEPがある。

 

 事業承継としての自社株設計は、次のSTEPからなります。 

STEP-1. 株価準備 

STEP-2. 株数準備 

STEP-3. 納税準備

 

(1) 株価準備 

株価準備は、自社株の評価を下げることにより後継者への引き継ぎコストを抑え、引継ぎがスムーズに行えるようにするものです。 

 類似業種比準価額の引き下げ 

a) 1株当たり配当金額の引き下げ 

2年続けて配当を抑制して1株当たりの配当金額を引き下げる方法です。 

b) 1株当たり利益金額の引き下げ 

利益圧縮の方法として、単に無駄な投資や支出を抑えるだけでなく、役員退職金の支払い、定期保険の加入、不良在庫の処分・廃棄など、会社の成長・発展に必要な支出をすることです。 

c) 1株当たり純資産価額の引き下げ 

1株当たり利益金額の引き下げの結果、純資産価額が圧縮されます。 

d) 類似業種平均株価の低い業種への転換 

会社分割、会社合併、営業譲渡により類似業種の株価の低い業種へ転換します。 

 

 純資産価額の引き下げ 

a) 時価と相続税評価額の乖離する資産の取得 

個人の相続財産の評価引き下げと同様に、不動産など時価と相続税評価額との差がある資産の取得により純資産価額は下がります。 

b) 資金の流出  

役員退職金、役員賞与、配当の支払いなど。 

 

 会社規模区分の変更 

 評価会社の純資産価額が類似業種比準価額を超える場合、会社規模区分を引き上げて大会社にすることにより、株価を引き下げることができます。 

 

 特定会社に該当しないようにする 

特定会社に該当する会社については、資産構成の変動や会社規模区分の引き下げにより類似業種比準方式が適用できるようにします。 

 

(2) 株数準備 

 後継者への生前移転 

相続税を低くするために、ある程度自社株を生前に移転していく必要があります。自社株の移転に際しては、経営権の安定を保ちながら移転コストを低くすることが必要です。

 

 自社株の移転に伴う課税関係 

自社株は、移転先が同族関係者であればその評価額は原則的評価であり、同族関係者以外では特例的評価となります。

 

 相続時精算課税制度と自社株贈与 

贈与後自社株の評価額が上昇すると見込まれる場合に、上昇相当額を相続税の対象外とすることができます。 

 

 自社株の移転先 

a) 後継者への移転 

後継者への贈与、譲渡、第三者割当増資など。 

b) 後継者以外の同族関係者への移転 

c) 同族関係者以外への贈与・譲渡 

d) 従業員持株会への譲渡 

 

(3) 納税準備 

 役員退職金等の活用 

オーナー社長の死亡退職金、弔慰金は相続税の計算上一定の非課税限度額があるため納税財源に利用します。

 

 生命保険の加入 

オーナー社長の相続時に死亡退職金の財源とするため、「契約者=会社、被保険者=オーナー社長、受取人=会社」として生命保険に加入します。

 

 相続財産の売却 

相続税の申告期限から3年以内に売却すれば取得費加算の特例が使えるため、譲渡税の負担が低く抑えられ、納税資金が増加します。 

 

 会社自身が自己株式の取得 

 

 自社株の物納 

相続等により取得した財産のほとんどが取引相場のない株式で、かつ、その株式以外に物納に充てる財産がないと認められるときは、取引相場のない株式を物納に充てることができます。 

 

 株式公開 

株式公開することによって自社株が市場で売買できるようになり、株式の一部を売却して納税資金とすることができます。 

 

 

 

 

8. 相続税の納税猶予・免除 

(2015-11,2014-11,2014-06,2013-11) 出題「非上場株式についての相続税の納税猶予の特例」 

 

l  Point

 

相続税の納税猶予・免除の特例とは、事業の後継者である相続人が、先代経営者である被相続人から相続等により取得した非上場株式の80%に対応する相続税の納税を猶予するもので、後継者の死亡等により、納税が猶予されている相続税の納付が免除される。

  

この特例で納税が猶予されるのは、その会社の発行済議決権株式の総数の2/3に達するまでの部分に限られます。 

 

(1) 猶予及び免除の特例 

 相続税の納付猶予 

後継者が納付すべき相続税のうち、適用対象株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。 

 相続税の納付免除 

事業を継続した相続人が、対象株式を死亡の時まで保有し続けた場合など一定の場合には、猶予税額は免除されます(死亡の日から6ヵ月を経過する日までに免除届出書を納税地の所轄税務署長に提出)。 

 

(2) 特例の要件 

 被相続人(先代経営者) 

Ÿ   会社の代表者であったこと。 

Ÿ   被相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の過半数を保有していたこと。 

Ÿ   事業承継相続人を除いた同族関係者のなかで筆頭株主であったこと。 

 

 相続人(後継者) 

Ÿ   被相続人から相続等により株式等を取得してその会社を代表して経営すること(相続人は、その相続開始の日の翌日から5ヵ月を経過する日において、その非上場会社の代表者であること)。 

Ÿ   相続人と同族関係者と合計して会社の発行済株式の議決権総数の過半数を保有すること。 

Ÿ   同族関係者のなかで筆頭株主であること。 

 

 会社 

Ÿ   中小企業基本法の中小企業で経済産業大臣の認定を受けていること。 

 

 事業継続要件(5年間の継続) 

Ÿ   代表者であり続けること。 

Ÿ   相続した対象株式を継続して保有し続けること。 

Ÿ   雇用の8割を維持し続けること。 

 

 

 

 

9. 贈与税の納税猶予・免除 

(2015-06,2014-11,2014-06, 2013-11) 出題「非上場株式の等についての贈与税の納税猶予の特例」 

 

l  Point

 

贈与税の納税猶予・免除の特例とは、事業の後継者である受贈者が、先代経営者である贈与者から贈与により取得した非上場株式に対応する贈与税の全額の納税を猶予するもので、2代目から3代目への再贈与などで、納税が猶予されている贈与税の納付が免除される。

  

この特例で納税が猶予されるのは、その会社の発行済議決権株式の総数の2/3に達するまでの部分に限られます。

 

(1) 猶予及び免除の特例 

 贈与税の納付猶予 

後継者が納付すべき贈与税のうち、適用対象株式等に係る課税価格に対応する贈与税の全額の納税が猶予されます。

 

 贈与税の納付免除 

先代経営者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税の納付が免除されます。また、1代目が存命中に、2代目が3代目に株式を贈与した場合(再贈与)にも、猶予されている贈与税の納付が免除されます。 

 

(2) 特例の要件 

 贈与者(先代経営者) 

Ÿ   会社の代表者であったこと。 

Ÿ   贈与時に会社の代表権を有していないこと。 

Ÿ   贈与直前に贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で、総議決権数の50%超の議決権を保有していたこと。

 

 受贈者(後継者) 

Ÿ   会社の代表者であること。 

Ÿ   20歳以上であること。 

Ÿ   役員等就任から3年以上経過していること。 

Ÿ   贈与時に後継者及び後継者と特別の関係がある者で、総議決権数の50%超の議決権を保有していること。

 

 会社 

Ÿ   中小企業基本法の中小企業で経済産業大臣の認定を受けていること。

 

 事業継続要件(5年間の継続) 

Ÿ   代表者であり続けること。 

Ÿ   贈与された対象株式を継続して保有し続けること。 

Ÿ   雇用の8割を維持し続けること。

 

 

 

 

10. 生命保険の課税関係

 

l  Point

 

 生命保険には、非課税の特典、相続時の納税資金となる、保険料支払いにより相続財産が減少するなどのメリットがある。また、受取人変更などで贈与税課税を相続税課税に変更し、税額を軽減することができる。

  

相続対策としての生命保険には、次のようなメリットがあります。 

  非課税の特典がある。 

  相続時の納税資金となる。 

  保険料支払いにより相続財産が減少する場合がある。 

 

(1) 死亡保険にかかる税金 

被保険者の死亡によって支払われる生命保険金は、誰を契約者(保険料負担者)、受取人にするかによって、課税される税金の種類が異なってきます。 

 

 契約者と被保険者が同一の場合(相続税) 

夫が自分で保険に加入し、相続人である妻や子を受取人とする場合です。保険金は相続財産とみなされ、相続税の対象となります。ただし、みなし相続財産として次の非課税枠があります。 

 

  500万円 × 法定相続人の数

  

 契約者と受取人が同一の場合(一時所得) 

たとえば、子が父親に生命保険をかけ、子が自分で保険金を受け取る形です。保険金は子の一時所得となり、所得税と住民税がかかります。一時所得の税負担はほかの所得税より軽くなります。一時所得の算式は以下の通りです(次節参照)。 

 

  (受取保険金額-払込保険料額-50万円) × 1/2 = 一時所得

 

 契約者、被保険者、受取人の三者が異なる場合(贈与税) 

たとえば、母親が父親に生命保険をかけて保険料を支払い、子を受取人とする場合です。この場合は贈与税がかかり、上記の2つのケースより税負担が重くなります。このような契約形態の場合は、受取人を変更する必要があります。 

 

(2) 相続対策に適した生命保険 

相続対策に適している保険について検討してみます。 

 

 終身保険 

死亡保障が一生涯続き、死亡時に必ず保険金が受け取れますので、いつ相続があっても相続対策には最適な保険といえます。 

 

 定期付終身保険 

定期期間の終了後は終身保険のみの保障となり、保険金額がかなり減額します。定期期間中の相続なら対応できますが、相続対策として利用するなら終身部分の増額が必要となってきます。 

 

 定期保険

一定期間のみの死亡保障となるので、期間満了後は保険金が一切支払われません。相続が定期保険の期間に発生するのなら別ですが、相続対策には不向きです。 

 

 養老保険 

満期までの死亡保障と満期時に死亡保険と同額の満期金があります。これも相続発生時期が特定できませんので、相続対策には向いていません。

 

 

 

 

11. 生命保険の活用

 

l  Point

 

死亡保険金は、所得税及び住民税(一時所得)の形にするのが最も課税負担が軽減される。この仕組みを生かすためには、父親が子に現金を贈与し、父親が被保険者、子が契約者(保険料負担者)・受取人の形にする方法がある。

  

生命保険は相続税の対象ではなく、所得税及び住民税(一時所得)の対象になるよう生命保険に加入する方法が有利となります。

 

(1) 生命保険料の現金贈与 

この仕組みを生かすためには、子自身が契約者として保険料を支払い、父親を被保険者としてその子が死亡保険金を受け取るように加入します。子に保険料を支払う能力がある場合、すなわち子に所得があるなどして子自身に現金がある場合には、このような生命保険加入は容易に実行できます。 

しかし、一般的には子に保険料支払能力がないケースも多いので、まず父親が子に現金贈与を行います。子はその贈与された現金で契約者として保険料を払込み、子自身が受取人となるという方法をとることが多くなっています。 

 

(2) 税務上の取扱い 

上記の方法では、子が契約者及び保険料負担者ですから、所得税及び住民税(一時所得)の課税ですむという状態にしておくためには、現金贈与が確実に行われていなければなりません。現金贈与が曖昧な場合には、実質的な保険料負担者は父親自身であったとして、死亡保険は相続税の対象になる場合があります。そのため実行にあたっては次の点に注意が必要です。  

 贈与事実の証拠を確実に残す(毎年の預金通帳や贈与税申告書等)。 

 子自身が保険料を支払うようにする(子の預金通帳から保険料の引落としを行うなど)。 

 現金贈与する父親は、所得税上、その生命保険契約について生命保険料控除の適用を受けないようにする(生命保険料控除の適用を受けるとその者が保険料負担者となる)。

 

 

 

TFICS       お気軽にご相談下さい

個別相談

業務依頼

ご意見・ご質問

●その他のお問合わせはこちら