1. 各相続人の納付税額
l Point
相続税の総額から各相続人の納付税額を算出し、この額をもって、各人が申告・納付する。 |
復習となりますが、計算過程において、相続税の総額を各人の課税価格に応じて按分し、各相続人ごとの算出税額を計算した後に、各人ごとの個別の事情により、税額加算や税額控除を行って、最終的な各相続人の納付税額を算出します。この納付税額をもって、申告・納付となります。
2. 相続税の延納
(2015-11,2015-06,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の延納」
l Point
相続税の延納の要件は、①金銭で一括納付が困難、②相続税額が10万円超、③担保の提供、④申告期限までに延納申請書を提出。 |
税金は金銭で一括納付することを原則としています。しかし、取得した財産の内容や相続人等の状況によっては、期限までに金銭納付することが困難な場合、相続税法では一定の要件を備えた場合に年賦延納(年払い)が認められています。
延納の年割額は延納税額を延納期間で除した金額で、年1回の元金均等払いとなります。また、担保の提供が必要であり、延納期間中には利子税が課せられます。
(1) 延納の要件・手続き
① 金銭で一括納付が困難であること。
延納税額は納付困難な金額を限度とする。
当面の生活費(3ヵ月分)及び当面の事業経費(1ヵ月分)などを控除する。
② 相続税額が10万円超であること。
③ 担保を提供すること。
延納税額が50万円未満かつ延納期間が3年以下の場合は不要である。
④ 申告期限までに延納申請書を提出すること。
担保提供関係書類を添付して提出し、所轄税務署長の許可を得る。
(2) 延納の担保と評価
① 国債・地方債
国債 ・・・・・ 額面金額
地方債 ・・・ 時価の80%以内
② 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
時価の80%以内
③ 土地
時価の80%以内
建物、立木等
時価の70%以内
④ 税務署長が確実と認める保証人の保証
保証人からの徴収見込額
3. 相続税の物納
(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の物納」
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相続税の物納の要件は、①延納によっても金銭納付が困難、②申告期限までに申請書等を提出、③物納適格財産であること。 |
税金は金銭で一括納付することを原則としていますが、金銭納付の例外として、一定の要件を備えた場合に物納が認められています。物納は、相続税だけに認められている納税方法です。
(1) 物納の要件
① 延納によっても金銭で納付することが困難であること(金銭で納付することを困難とする金額が限度)。
② 申告期限までに物納申請書及び物納手続関係書類を提出し、税務署長の許可を得ること。
③ 物納適格財産であること。
(2) 物納できる財産
① 物納申請者の相続税の課税対象となった財産(相続時精算課税の適用を受けるものを除く)。
② 課税対象となった財産を処分などして取得した財産。
③ 相続開始前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産で、相続税の課税価格に加算された財産。
(3) 物納できる財産の範囲(国内にあるもの)
① 国債及び地方債
② 不動産及び船舶
③ 社債、株式、証券投資信託・貸付信託の受益証券
④ 動産
(4) 物納順位(① → ⑤の順位)
● 第1順位
①「国債及び地方債」と「不動産及び船舶」
②「不動産のうち物納劣後財産」
● 第2順位
③「社債、株式、証券投資信託・貸付信託の受益証券」
④「株式のうち物納劣後財産」
● 第3順位
⑤「動産」
4. 物納制度と特定物納制度
(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の物納」
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物納が却下された場合は、物納の再申請や延納の再申請ができる。また、延納が困難になった場合は物納を選択することができる(特定物納制度)。 |
(1) 物納の却下と再申請
物納財産が管理処分不適格財産または物納劣後財産に該当するため、物納申請の却下をされたときは、その却下の日の翌日から20日以内に却下された財産ごとに1回に限り他の財産による物納の再申請をすることができます。
(2) 延納申請への変更
物納申請が下記の理由により却下された場合には、却下された翌日から20以内に延納申請書を提出できます。
① 延納により金銭で納付することを困難とする事由がない。
② 物納申請税額が延納により納付を困難とする金額より多い。
(3) 特定物納制度
相続税を延納中の者が、資力状況の変更等により延納条件の変更をしても延納が困難となった場合には、申告期限から10年以内に限り、延納税額から納期限の到来した分納税額を控除した残額(特定物納対象税額)のうち、納付を困難とする金額を限度として、物納を選択することができます。
特定物納に係る財産の収容価額は、その特定物納に係る申請の時の価額によります。ただし、収納時までに物納財産の状況に著しい変化が生じたときには、収納時の現況により評価した価額となります。
(4) 却下と取下げの税
① 却下・みなす取下げ(利子税)
物納申請が却下された場合、または物納申請を取り下げたものとみなされた場合(物納手続関係書類を期限までに提出しなかったことによる)には、納期限の翌日から物納申請の却下または取り下げとみなされた日までの期間について利子税を納付します。
② 自ら取下げ(延滞税)
物納申請を自ら取り下げた場合には、取下げに係る相続税の納期限の翌日から相続税の完納の日までの期間について延滞税を納付します。
5. 取得費加算の特例
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取得費加算とは、一定の要件のもとで譲渡所得の計算において通常の取得費に一定の相続税相当額を加算する規定で、相続税が減額される。 |
相続財産の多くが不動産である場合、納税資金が不足し、せっかく相続によって取得した土地なのにその土地を売却して納税資金を作らなければならないことがあります。
このような場合は、土地の売却益に対して譲渡所得として所得税及び住民税が課税されます。ただし、一定の要件に該当する場合には、譲渡所得の計算において通常の取得費に一定の相続税相当額を加算する取得費加算という規定が設けられています。これにより、売却益が圧縮され、相続税額の減額となります。
(1) 特例の適用要件
① 相続開始の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年以内の譲渡であること。
② 相続や遺贈により取得した財産の譲渡であること。
(2) 取得価額の引継ぎ
相続・遺贈・贈与により取得した資産の取得費は、被相続人・遺贈者・贈与者等の取得時期及び取得価額を引き継ぎます。
加算される金額は譲渡した資産の譲渡益が上限となるため、取得費加算により損失にとなることはありません。
(3) 加算される金額
① 譲渡した資産が土地等
譲渡した者の相続税額 ×(譲渡した者が相続等により取得したすべての土地等の課税価格 ÷ 譲渡した者の相続税の課税価格(債務控除前)
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計算式における土地等とは、土地または土地の上に存する権利をいいます。また、物納した土地等や物納申請中の土地等は含まれません。
② 譲渡した資産が土地等の以外の資産
譲渡した者の相続税額 ×(譲渡した資産の課税価格 ÷ 譲渡した者の相続税の課税価格(債務控除前) |
6. 連帯納付義務
(2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の連帯納付義務」
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相続または遺贈で取得した者が2人以上、未納のまま相続人が死亡、取得した財産が贈与等の場合においては、連帯納付義務が発生する。 |
連帯納付義務が発生するのは、以下の場合です。
(1) 相続または遺贈で取得した者が2人以上
l 同一の被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者が2人以上いる場合
これらの者はその相続または遺贈により取得した財産に係る相続税について、その相続または遺贈により受けた利益の額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の義務を負います。
(2) 未納のまま相続人が死亡
l 同一の被相続人から相続または遺贈により財産を取得した者が2人以上いる場合で、一部の相続人
が相続税を未納のまま死亡した場合
⇒ 残りの相続人は死亡した相続人からの相続または遺贈により受けた利益の額に相当する金額を限度として、互いに連帯納付の義務を負います。
(3) 取得した財産が贈与等
l 相続税の課税価格の計算の基礎となった財産について贈与等があった場合
⇒ その贈与等によって財産を取得した者は、その贈与等をした者の納付すべき相続税額のうち次の算式により算出された部分の金額について、その受けた利益の額に相当する金額を限度として、連帯納付の義務を負います。
相続税額 × |
(4) 連帯納税義務の解除
平成24年4月1日以後に申告期限が到来する相続税について、以下の場合は連帯納付義務が解除されます。
① 申告期限等から5年を経過した場合の納付すべき相続税額
② 納税義務者が延納の適用を受けた場合の延納許可を受けた相続税額
③ 納税義務者が納税猶予の適用を受けた場合の納税猶予された相続税額