4.相続税の計算

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1. 相続税の計算の仕組み 

 

l  Point

 

相続税の計算には大きく3つのSTEPがある。相続財産の課税価格の計算、相続

税の総額の計算、各相続人の納付税額の計算。計算の全体イメージを理解する。

 

  

相続税の計算には大きく3つのSTEPがあります。  

 相続財産の課税価格の計算 

 相続税の総額の計算 

 各相続人の納付税額の計算 

 

ここでは、相続税を計算するための全体イメージを理解することが重要です。 

 

STEP-1】 相続財産の課税価格の計算 

 このステップでは、「全体の相続財産」がいくらかを計算します。  

 

(1) 全体の相続財産はいくらか 

相続税を計算する上で基礎となるのが「相続財産の課税価格」です。次のように計算します。 

 

本来の相続財産+みなし相続財産-非課税財産-債務控除+生前贈与

=課税価格の合計額 ・・・・ (A)

  

(2) 課税される財産はいくらか 

次に、上記の課税価格から基礎控除額を差し引いて「課税遺産総額」を出します。  

 

課税価格合計額(A)-基礎控除額=課税遺産総額  ・・・・ (B)

 

 STEP-2】 相続税の総額の計算 

このSTEPでは、「相続税の総額」がいくらになるかを計算します。 

 

(1) 全体の相続税はいくらか 

これは、【STEP-1】で算出した「課税遺産総額」(B)をもとに次のように計算します。 

 

課税遺産総額(B)×各人の法定相続分×税率=各相続人の税額合計 ・・・・(C)

  

(2) 各人の相続税はいくらか 

これは、上記で算出した各相続人の「税額合計」(C)をもとに計算します。 

 

 

各相続人の税額合計(C)× {各相続人の課税価格÷課税価格の合計額(A)}

= 各相続人の算出税額

 

 

 

STEP-3】 各相続人の納付税額を計算 

このステップでは、「各相続人の納付税額」がいくらになるかを計算します。 

 

STEP-2】で算出した「各相続人の算出税額」に必要な加算・減算、控除を行います。

 

計算する上で必要な税額控除には次のものがあります(詳細は本章「4.相続人の相続税額」)。

  

・贈与税額控除 

・配偶者税額軽減 

・未成年者控除  

・障害者控除  

・相次相続控除  

・外国税額控除  

・相続時精算課税にかかる贈与税額控除 

 

これにより、各相続人の納める税額が決まります。ここで注意したいのは、課税遺産総額あるいは各人が取得した遺産額に直接税率を掛けるのではないということです。

  

 

 

 

2. 相続財産の課税価格 【STEP-1

 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の課税遺産総額」「相続開始前3年以内の贈与財産の加算」 

 

l  Point

 

このSTEPでは、相続財産において課税価格に含まれるものと含まれないものを区別し、それらを加算・減算、控除して相続財産の課税価格を計算する。

  

 

n  STEP-1】 相続財産の課税価格  

 

3つのSTEPのうち、まず【STEP-1】にあたる「相続財産の課税価格」を求めます。ここでは、課税価格に含まれるものと含まれないものを区別し、各項目を加算・減産、控除して算出します。 

 

本来の相続財産+みなし相続財産-非課税財産-債務控除+生前贈与財産=課税価格

 

 (1) 本来の財産 (第3章「相続税の課税財産」の「2.本来の相続財産とみなし相続財産」参照) 

相続や遺贈により取得した財産です。土地、家屋、株式、公社債、預貯金などです。 

 

(2) みなし相続財産 (第3章「相続税の課税財産」の「2.本来の相続財産とみなし相続財産」参照) 

相続や遺贈により取得したとみなされる財産です。生命保険金・損害保険金、死亡退職金や死亡退職金手当金(死亡後3年以内に確定したもの)等も含まれます。 

 

(3) 非課税財産 (第3章「相続税の課税財産」の「3.相続税の非課税財産」参照)

 相続税のかからない財産には、主に次のものが含まれます。 

 

 墓地、霊廟、仏壇、仏具 

 公益事業用財産 

 生命保険金等の一定金額 

 退職手当金等の一定金額など 

 債務及び葬儀費用  

 

(4) 債務控除 (第3章「相続税の課税財産」の「4.債務控除」参照) 

 債務 

被相続人が死亡した時点にあった債務で確実と認められるもの。たとえば、銀行などからの借入金、各種ローン、事実上の買掛金など。被相続人が生前に購入した墓の未払い代金は非課税財産に関する債務とはなりません。 

 

 葬儀費用 

葬儀費用は被相続人の債務ではありませんが、相続があった時に必ずかかる費用として控除の対象となります。 

イ)   控除できる費用 

通夜、本葬費用、死体捜索・運搬費用 

ロ)   控除できない費用 

香典返し、法会費用 

 

(5) 生前贈与財産 

 相続開始3年前に贈与された財産 

相続や遺贈など相続開始前3年以内に贈与を受けたものです。 

 

 相続時精算課税制度に係る贈与財産 

相続時精算課税制度を選択して被相続人から贈与を受けたすべての財産です。 

 

上記(1)から(4)を加算・減算することで、「相続財産の課税価格」【STEP-1】の合計額が算出できます。

  

 

 

 

3. 相続税の総額 【STEP-2

 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の総額」「遺産に係る基礎控除額を計算する上での法定相続人」「遺産に係る基礎控除額」

  

l  Point

 

このSTEPでは、相続財産の課税価格から課税遺産総額を算出、課税遺産総額を法

定相続分で法定相続分に応じた取得金額を算出、各相続人の取得金額から各人の相続税額を算出、各人の相続税額を合計して相続税の総額を求める。

 

  

 n  STEP-2】 相続税の総額 

相続財産の課税価格から基礎控除額を差し引き、「課税遺産総額」を出します。課税遺産総額を法定相続分で仮分割し、法定相続分に応じた取得金額を算出し、各相続人の取得金額に税率を掛け、「各人の相続税額」を求めます。 

 

3つのSTEPのうち、【STEP-2】にあたる部分です。【STEP-1】で算出した「相続財産の課税価格」をもとに「相続税の総額」を求めます。 

 

(1) 基礎控除額  

相続財産の課税価格から基礎控除を引いたものが「課税遺産総額」となります。 

基礎控除額は次の計算式で求めます。 

 

3000万円+600万円 × 法定相続人の数

 

  たとえば、法定相続人が3人なら、4800万円(3000万円+600万円×3人)となります。 

基礎控除額は、平成2711日以降、「3000万円+600万円×法定相続人の数」。) 

この法定相続人には、計算上、相続放棄をした人を含みます。養子がいる場合は、次のように計算します。  

 被相続人に実子がいる 

養子の数は1人まで 

 被相続人に実子がいない 

養子の数は2人まで 

ただし、特別養子は実子として扱われますので養子の数の制限を受けません。 

 

(2) 課税遺産総額 

課税遺産総額を法定相続分で仮分割し、法定相続分に応じた取得金額を算出し、各相続人の取得金額に相続税率を掛け、「各人の相続税額」を求めます。 

 

課税遺産総額 × 各人の法定相続分 × 税率=各相続人の相続税額合計

 

 (3) 相続税の総額 

上記(2)で計算した「各相続人の相続税額」を合計したものが「相続税の総額」となります。

 

 

 

 

4. 相続人の相続税額 【STEP-3 

(2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続人の相続税額」 

 

l  Point

 

このSTEPでは、相続税の総額を各相続人の取得分で按分し、これに2割加算するものを加え、各税額控除を差し引いて、各相続人の納付税額を求める。

 

  

n  STEP-3】 相続人の相続税額 

 

3つのSTEPのうち、【STEP-3】にあたる部分です。【STEP-2】で算出した「相続税の総額」をもとに相続税の「各相続人の納付総額」を求めます。 

 

(1) 相続税の按分計算 

STEP-2】で計算した「相続税の総額」を実際に各相続人が取得した財産の価額に応じて振り分けます。次のように按分計算します。 

 

各相続人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額

  

(2) 税額加算と税額控除 

 上記(1)で算出された「各相続人の相続税」に、相続人に応じた税額加算、税額控除を行い「各相続人の納付税額」を算出します。 

 

 税額加算と税額控除については、次項で解説します。 

 

 

 

 

5. 税額加算と税額控除  

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06)  出題「配偶者に対する相続税の税額軽減額」「相続税額の2割加算」「贈与税額控除」 

 

l  Point

 

 この章では税額控除のうち、贈与税額控除、配偶者の税額軽減、未成年者控除について説明する。

 

  

(1) 税額加算 

 2割加算 

被相続人の1親等の血族(父母または子。代襲相続人含む)と配偶者を除いて相続税額の2割相当額を加算します。子がすでに死亡していて代襲相続人となった孫も2割加算の対象に含まれます。

  

(2) 各種税額控除 

各人の税額に2割加算したあとの税額に各種税額控除分を差し引いて、各相続人の納付税額を計算します。各種の税額控除には、次のものがあります。 

 贈与税額控除 

STEP-1】で各人の課税価格を求める際に、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産がある場合には課税価格に加算しています。このとき、この贈与財産にすでに贈与税が課税されていると二重課税になるため、相続税額から控除します。贈与を受けた相手が被相続人だけの場合は、その年の贈与税額がそのまま控除額となります。 

 

 配偶者税額軽減 

配偶者には、次の計算式による額が控除されます。 

 

 

相続税の総額 ×{(イ)※、(ロ)※ のいずれか少ない金額 ÷ 課税価格の合計額}

 

 (イ)※ 課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(1億6千万円に満たない場合は1億6千万円)

 (ロ)※ 配偶者の課税価格  

 

 

 

 ただし、この特例の対象となるのは、遺産分割によって実際に取得した財産に限られます。また、対象となる配偶者とは、被相続人との婚姻の届出をしている者であり、内縁関係にある者には適用されません。

  

 未成年者控除 

次のすべての要件に該当する場合に控除できます。 

イ)   相続開始時の年齢が20歳未満。 

ロ)   法定相続人である。 

ハ)   制限納税義務者(外国に住所があり、国外財産の取得について課税されない人)に該当しない。

 

控除額は次の算式で求められます。

  

20歳-相続開始時の年齢× 6万円

1年未満は切り上げ

 

    

 

 

6. 税額加算と税額控除  

(2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「障害者控除」「相次相続控除」

  

l  Point

 

この章では税額控除のうち、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除について説明する。

 

  

 以下、税額控除の続きです。 

 

 障害者控除  

次のすべての要件に該当する場合に控除できます。 

イ)   相続開始時の年齢が85歳未満である障害者。 

ロ)   法定相続人である。 

ハ)   制限納税義務者に該当しない。 

 

控除額は次の算式で求められます。 

 

l  一般障害者

85歳-相続開始時の年齢 )× 10万円

l  特別障害者

85歳-相続開始時の年齢) ×20万円

1年未満は切り上げ

 

 相次相続控除 

前の相続(一次相続)から10年以内に今回の相続(二次相続)が起こった場合には、今回の相続人の税額から一定額が控除されます。なお、相続を放棄したり、相続権を失っている場合は控除の適用はありません。 

 

イ)   適用対象者 

被相続人(X氏)の死亡前10年以内に開始した父(Y氏)の相続(第1次相続)において、その被相続人(X氏)が財産を取得しているときは、その被相続人(X氏)から相続または遺贈により財産を取得した相続人・長男(Z氏)については、次の算式で計算した控除額を今回の相続(第2次相続)で算出された相続税額から控除します。 

 

ロ)   控除額 

控除額は次の算式で求められます。 

 

 

各相続人の相次相続控除額 = A × C/(B-A) × D/C × (10-B)/10 

 

A: 第2次相続の被相続人が課せられた第1次相続時の相続税額

B: 第2次相続の被相続人が第1次相続のときに取得した財産の価額

C: 第2次相続のときに相続人及び受遺者の全員が取得した財産の価額の合計額

D: 第2次相続のときに相続人が取得した財産の価額

E: 第1次相続開始時から第2次相続開始時までの年数(1年未満は切り捨て)

  

 外国税額控除(在外財産に対する相続税額の控除)                                                                               

      外国で課税された相続税相当額を日本の相続税額から控除できます。 

「外国で課税された相続税相当額」より次の算式で求められる控除額が少ない場合は、次の控除額となります。 

 

日本における各種税額控除後の算出相続税額 ×( 外国所在財産の価額÷その者の相続税の課税価格)

 

 相続時精算課税制度に係る贈与税額控除 

STEP-1】で各人の課税価格を求める際に「相続時精算課税に係る贈与財産の価額」を計上し 

た場合、その贈与財産について贈与税額があればそれを控除します。 

 

l  控除の順序 

 税額控除の順序は、次のとおりです。 

 

贈与税額控除  配偶者の税額軽減  未成年者控除  障害者控除   相次相続控除  外国税額控除  相続時精算課税制度に係る贈与税額控除

 

  

 

 

 7. 相続税モデル計算  

(2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の計算」 

 

l  Point

 

STEP-1】の「相続財産の課税価格」の算出までの流れ。

 

  

 以下、事例でレジュメの計算様式を用いて相続税額を計算してみましょう。

 

STEP-1】 「相続財産の課税価格」の計算まで 

 

【事例】 

法定相続人

妻、長男、長女の3人 

課税対象財産

本来の財産: 51500万円  生命保険金: 1億円(受取人は妻) 

遺産取得価額

妻: 31500万円  長男: 2億円  長女: 1億円              

債務・葬式費用・生前贈与財産はなし

  

課税対象財産のうち、生命保険金は「みなし相続財産」となり1500万円(500万円×3人」が非課税となります。本来の財産とみなし財産を合計し、その額から非課税財産及び債務・葬式費用を減算、生前贈与財産を加算し、各人の課税価格を出します。その合計額が「相続財産の課税価格」です。

 

 

 

8.  相続税モデル計算 

(2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の計算」 

 

l  Point

 

STEP-2】 「相続税の総額」の算出までの流れ。

  

 

STEP-2】 「相続税の総額」の計算まで

 

  「相続財産の課税価格」(STEP-1)から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を出し、いったんここで法定相続分に応じた取得金額を算出します。この取得金額に応じた相続税額を速算表(*)で計算し、各相続人の相続税額を合計した額が「相続税の総額」です。 

(*)章末「相続税の速算表」参照

  

 

 

 

9.  相続税モデル計算

 

(2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「相続税の計算」 

 

l  Point

 

STEP-3】 「各相続人の納付税額」の算出までの流れ。

 

  

STEP-3】 「各相続人の納付税額」の計算まで 

 

 「相続税の総額」(STEP-2)を、各相続人が実際に取得した課税価格の割合で按分します。これらの税額から各相続人に応じた加算(2割加算)、減算(税額軽減・税額控除)を行い、「各相続人の納付税額」を算出します。

 

 

 

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