3.相続税の課税財産

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 1. 相続税の納税義務者 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「制限納税義務者の課税価格」「非制限納税義務者の課税価格」「外国に住所を有する者等の相続税の申告書の提出先」

 

l  Point

 

居住無制限納税義務者と非居住無制限納税義務者は、相続等により取得した全世界すべての財産に相続税が課税される。制限納税義務者は、相続等により取得した日本国内にある財産に相続税が課税される。

  

(1) 相続税の納税義務者 

相続税の納税義務者は、相続または遺贈(死因贈与含む)により財産を取得した個人(自然人)です。 

なお、例外として、代表者または管理者の定めのある人格のない社団または財団や、持分の定めのない法人に対し財産の遺贈があった場合で、個人とみなして課税する場合等があります。

 

(2) 相続税の納税義務者と課税財産の範囲 

 居住無制限納税義務者 

相続で財産を取得した人の住所が日本国内にあれば、国内にある財産だけではなく、国外にある財産を相続したときも、相続等した全世界すべての財産が相続税の課税対象となります。この場合の「住所」とはその人の生活の本拠地をいいます。

 

 非居住無制限納税義務者 

イ)   課税時期において国外に住所がある納税義務者が日本国籍を有している場合、相続により取得

した財産の所在を問わず、原則としてすべての財産(相続等した全世界すべての財産)が相続税の課

税対象となります。 

ロ)   「相続税の納税義務者(相続人・受遺者)」と「被相続人」の両方がともに、「課税時期の前5

 年を超えて外国に居住している」場合には、日本国内のある財産の相続についてのみ相続税がかかります。すなわち、国外財産の相続については相続税がかかりません。 

 

 制限納税義務者 

外国に住所があり、国籍も国外である人の場合は、日本国内にある財産のみ相続税の課税対象となります。

 

(3) 相続開始前3年以内の贈与財産 

無制限納税義務者及び制限納税義務者は、その相続開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、その贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した上で、相続税の総額や各相続人等の相続税額を計算します。 

 

 

 

 

2. 本来の相続財産とみなし相続財産 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「生命保険の非課税財産」「退職手当金等」 

 

l  Point

 

相続税が課税される財産には、「本来の財産」と「みなし相続財産」がある。「みなし相続財産」は、本来の相続や遺贈により取得した財産でなくても、経済的にみて相続や遺贈で財産を取得したものと同じ効果があるものをいう。

  

(1) 本来の相続財産 

 相続税は、相続または遺贈により取得した財産について課税されます。本来の相続財産とは、「金  

 銭に見積もることのできる経済価値のあるすべてのもの」をいいます。 

 具体的には、 土地、家屋、株式、預貯金、現金、貴金属、宝石、書画、骨董、自動車、立木、金

 銭債権、借地権、借家権、営業権、著作権等です。 

 

(2) みなし相続財産 

民法に規定する本来の相続や遺贈により取得した財産でなくても、経済的にみて相続や遺贈で財産

を取得したものと同じ効果がある場合には、相続や遺贈により取得したものとみなして相続税の課税財産とします。 

 

 生命保険金等  

被相続人の死亡により取得した生命保険金等のうち、被相続人が負担した保険料に対応する部分が相続財産とみなされます。

 

 生命保険金等の金額 × (被相続人が負担した保険料の金額÷被相続人の死亡時までに払い込まれた保険料の金額)

  

会社などが保険料を負担して従業員を被保険者として生命保険契約を結んでいる場合には、保険料を従業員が負担したものとみなされ、従業員の死亡により保険金をその相続人が受け取った場合には、みなし相続財産となります。 

 

 退職手当金等

 被相続人の死亡により相続人その他の者が、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものの支給を受けた場合においては、これらの給与の支給を受けた者について、その給与の額を相続または遺贈により取得したものとみなされます。 

イ) 生前退職により生前確定した退職手当金 

 被相続人に所得税(雑所得)が課せられ、死亡時までにこのうち費消されなかった額が相続財産となり相続税の課税対象となります。 

ロ) 被相続人の死亡後3年以内に支給の確定した退職手当金 

 相続財産とみなされ相続税の課税対象となります(みなし相続財産)。所得税は課税されない。 

ハ) 被相続人の死亡後3年を経過した後に支給の確定した退職手当金 

 受け取る者(遺族等)に対して所得税・住民税(一時所得)が課せられます。 

二) 死亡後に確定した(被相続人が受けるべきだった)賞与は、本来の相続財産。 

ホ) 死亡時に支給期の到来していない俸給、給料等は、本来の相続財産。 

 

 生命保険契約に関する権利 

相続開始の時において、まだ保険事故が発生していない生命保険契約(掛捨ての保険契約は除く)で、被相続人が保険料の全部または一部を負担し、かつ、契約者が被相続人以外の者である場合、当該契約の権利のうち被相続人が負担した保険料に対応する部分。 

 

 定期金に関する権利 

相続開始の時において、まだ定期金給付事由が発生していない定期金給付契約(生命保険契約は除く)で、被相続人が掛金または保険料の全部または一部を負担し、かつ、被相続人以外の者が当該定期金給付契約の契約者であるものがある場合において、被相続人が負担した掛金または保険料で当該相続開始の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分。

 

 保証期間付き定期金に関する権利 

保証期間付き定期金の定期金受取人である被相続人の死亡後、相続人その他の者が、定期金(継続)受取人または一時金(継続)受取人となった場合に、被相続人が負担した掛金または保険料の金額に対応する部分に相当する部分。 

 

 遺贈により取得したとみなされる財産 

・特別縁故者への財産分与 

・低額譲受 

・債務免除等 

・その他の利益の享受等 

・信託に関する権利 

 

 

 

 

3. 相続税の非課税財産 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06)  「生命保険の非課税財産」「退職手当金等」 

 

l  Point

 

相続税の非課税財産には、墓所、霊廟、仏壇、仏具等のほか、一定金額までの生命保険金等や退職金等があり、その非課税上限額は「500万円×法定相続人の数」である。

  

(1) 非課税財産 

相続税のかからない財産には、主に次のものがあります。 

Ÿ   墓所、霊廟、仏壇、仏具 

Ÿ   公益事業用財産 

Ÿ   生命保険金等の一定金額 

Ÿ   退職手当金等の一定金額など 

 

(2) 生命保険金等の一定金額 

被相続人の死亡により相続人または相続人以外の者が取得した生命保険金等のうち、被相続人が負担した保険料に対応する部分は「みなし相続財産」として課税されますが、そのうち相続人が取得した金額のうち一定金額は非課税となります。

 

 保険金の合計額が「500万円×法定相続人の数」以下の場合

相続人が取得した保険金の全額が非課税となります。この場合、以下の額が生命保険金等の非課税限度額となります。 

 

  500万円×法定相続人の数

  

 保険金の合計額が「500万円×法定相続人の数」を超える場合 

次の算式により算出した保険金の金額が各相続人の非課税の額となります。 

 

 生命保険金等の非課税限度額 × (その相続人が取得した生命保険金等の額÷すべての相続人が取得した生命保険金等の合計額)

  

 相続等を放棄した者等が死亡保険金を取得した場合 

 相続等を放棄した者等が死亡保険金を取得した場合には、相続人以外の者が取得したこととなり、生命保険金等の非課税の適用は受けられません。ただし、非課税限度額の計算における「法定相続人の数」のカウントについては、「その放棄がなかったものとした場合の相続人の数」となります。 

 

(3) 退職金等の一定金額 

被相続人の死亡により相続人等に対して、本来であれば被相続人に支給されるべきだった退職手当金等が支給された場合には、その退職手当金等は、相続または遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となりますが、生命保険金等と同様に、相続人が取得した金額のうち一定金額は非課税となります。

 

 退職手当金等の合計額が「500万円×法定相続人の数」以下の場合 

相続人が取得した退職手当金等の全額が非課税となります。この場合、以下の額が非課税限度額となります。 

 

  500万円 × 法定相続人の数

  

 退職手当金等の合計額が「500万円×法定相続人の数」を超える場合 

次の算式により算出した退職手当金等の金額が各相続人の非課税の額となります。 

 

 退職金等の非課税限度額 × (その相続人が取得した生命保険金等の額÷すべての相続人が取得した生命保険金等の合計額)

 

  

 

 

4. 債務控除 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「債務控除額」

 

l  Point

 

相続税の課税価格の計算において、債務及び葬式費用は控除できるものと控除できないものがある。債務控除は相続人及び包括受遺者に適用され、相続を放棄した者または相続権を失った者には適用されない。

  

(1) 債務及び葬式費用の控除 

相続や遺贈により財産を取得した者が、引き継いだり負担した債務や葬式費用の分については、相続税の課税価格の計算において、債務及び葬式費用を相続または遺贈により取得した財産の価額から控除します。

 

(2) 債務控除の対象となるもの 

債務控除は相続人及び包括受遺者に適用されます。相続を放棄した者または相続権を失った者には適用されませんが、葬式費用については現実に負担した金額は控除することができます。

 

 債務  

被相続人が死亡した時点にあった債務で確実と認められるもの。 

(イ) 控除できる費用  

Ÿ   借入金 

Ÿ   アパートの預かり敷金 

Ÿ   未払い医療費 

Ÿ   被相続人にかかる未払の所得税、住民税、固定資産税等( 

)住民税や固定資産税等は、賦課期日に納税義務が確定したものとされる(納付期限が到来していないものも含む)。 

 

(ロ) 控除できない費用 

Ÿ   墓地買入未払金 

Ÿ   保証債務(主たる債務者に求償しても返還の見込みがない場合、弁済不能分は控除可) 

Ÿ   遺言執行費用 

Ÿ   弁護士 

Ÿ   税理士費用 

Ÿ   土地の測量費用 

 

 葬儀費用 

葬儀費用は被相続人の債務ではありませんが、相続があった時に必ずかかる費用として控除 

の対象となります。 

(イ) 控除できる費用 

Ÿ   通夜費用 

Ÿ   本(密)葬費用 

Ÿ   葬式前後に生じた出費で通常必要と認められるもの 

Ÿ   死体の捜索、運搬費用  

 

(ロ) 控除できない費用 

Ÿ   香典返戻費用 

Ÿ   法会費用 

Ÿ   医学上、裁判上の特別の処置に要した費用 

 

 

 

 

5. 小規模宅地等の特例の概要 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「小規模宅地等の特例」 

 

l  Point

 

小規模宅地等の特例とは、相続または遺贈等により取得した、被相続人等の居住用宅地・事業用宅地・不動産貸付用宅地等のうち、それぞれの減額対象面積において一定割合を通常評価額から減額する規定である。2以上の種類の宅地等については、地積の限度額が調整される。

 

(1) 特例の趣旨 

相続または遺贈により取得する主な財産が自宅または事業用資産で、その敷地の評価額が高額のため多額の相続税がかかり、その納税のために自宅や事業用店舗の敷地を売却しなければならない、ということを回避するための規定が「小規模宅等についての相続税の課税価格の計算の特例」です。

 

(2) 減額の割合 

相続または遺贈等により取得した、被相続人または被相続人と生計を一にする親族(被相続人等)の居住用宅地・事業用宅地・不動産貸付用宅地等(いずれも建物または構築物の敷地であること)のうち、次の減額対象面積において一定割合を通常評価額から減額する規定です。 

 

Ÿ   居住用 330 (80%) ※

Ÿ   事業用 400 (80%)

Ÿ   貸付用 200 (50%)

  ※平成2711日より居住用は限度額は240㎡から330㎡に改正。 

 

なお、相続人等が相続税の申告期限まで事業または居住を継続しない宅地等は適用対象から除外します。 

 

(3) 減額となる地積 

 減額対象宅地の選択 

居住用宅地・事業用宅地・不動産貸付用宅地については、取得者はそれぞれについて限度面積まで減額適用があるわけではありません。自宅の敷地330㎡と不動産貸付用宅地200㎡がある場合には、これらの宅地のうち相続人等がもっとも有利なものとして選択した宅地等についてこの特例の適用を受けることができます。 

 

 減額対象宅地の調整計算 

特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等及び特定居住用宅地等については、減額対象宅地が、400㎡、330㎡、200㎡の間で調整計算されます。 

2以上の種類の宅地等について、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例を受ける場合、地積の限度額は以下のように計算します。 

 

 

200/400+B×200/330)+C≦200

 

   A  : 特定事業用宅地等の面積

   B  : 特定居住用宅地等の面積

     C  : 貸付事業用宅地等の面積

  

 以下、具体例で見てみます。 

 

【事例】 

 

甲宅地、乙宅地の小規模宅地等の特例適用後の相続税評価額はいくらか。

 

甲宅地

相続税評価額 1000万円

特定居住用宅地 120㎡ (長男取得)

乙宅地

相続税評価額 2000万円

貸付事業用宅地  80㎡ (次男取得)

 

 特例の対象面積

・甲宅地: 120㎡<330㎡(居住用宅地の限度面積)   120㎡が対象面積

・乙宅地:  80㎡<200㎡(貸付用宅地の限度面積)    80㎡が対象面積

 調整計算では、下式により200㎡(限度面積)以内なので、対象面積は甲土地120㎡、乙土地80㎡となる。

∴120(特定居住用)×200/33080(貸付事業用)152.73≦200

 減額される金額

・甲宅地: 1000万円×80%800万円

・乙宅地: 2000万円×50%1000万円

 相続税評価額

・甲宅地: 1000万円-800万円=200万円

・乙宅地: 2000万円-1000万円=1000万円

              (合計1200万円)

  

 

 

 

6. 小規模宅地等の特例の適用要件 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「小規模宅地等の特例」 

 

l  Point

 

小規模宅等の特例の適用要件については、「居住用」「事業用」「不動産貸付用」という被相続人要件と、相続税の申告期限までの間にどのように利用しているかという相続人要件などがあり、それらの要件を満たすことで減額を受けられる。

  

小規模宅地等の特例の適用要件について、それぞれ見ていきます。

 

(1) 特定事業用宅地等 

被相続人等の事業(不動産貸付業などを除く)の用に供されていた宅地等で、次の要件のいずれかを満たす被相続人の親族が取得したものを「特定事業用宅地等」として、400㎡を限度として80%減額となります。 

 

区分

適用要件

 被相続人の事業用宅地(不動産貸付業などを除く)

イ) 被相続人の事業を引き継ぐ親族が、相続税の申告期限までに事業を引き継ぐこと。

ロ) 相続税の申告期限まで引き続き当該宅地等を所有し、かつその事業を営んでいること。

ハ) 相続発生後に被相続人の事業を承継すること。

 被相続人と生計を一にしていた親族の事業用宅地(不動産貸付業などを除く)

イ) 相続の開始前からその宅地で事業を営んでいた、被相続人と生計を一にしていた親族であること。

ロ) 相続税の申告期限まで引き続き当該宅地等を所有し、かつ相続開始前から申告期限までその事業を営んでいること。

 

(2) 特定居住用宅地等 

被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、被相続人の配偶者または次に掲げる要件のいずれかを満たす被相続人の親族が取得したものを「特定居住用宅地等」として、330㎡を限度として80%減額となります。 

 

区分

適用要件

被相続人と同居していた親族の宅地等

相続開始時から相続税の申告期限まで引き続き所有し、かつ居住し続けること。

被相続人の配偶者及び同居相続人がなく、かつ相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者の持ち家に居住したことがない親族が取得した、被相続人の居住の用に供されていた宅地等

相続開始時から相続税の申告期限まで引き続き所有し続けること。

被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用に供されていた宅地等

相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続き所有し、かつ居住し続けること。

  

(3) 貸付事業用宅地等 

被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、次の要件のいずれかを満たす被相続人の親族が取得したもの(特定同族会社事業用宅地等を除く)を「貸付事業用宅地等」として、200㎡を限度として50%減額となります。 

 

区分

適用要件

被相続人の貸付事業用宅地

被相続人の親族が申告期限までの間に貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、貸付事業の用に供していること。

被相続人と生計を一にしていた親族の貸付事業用宅地

被相続人と生計を一にしていた親族が、申告期限まで当該宅地等を有し、かつ、相続の開始前から申告期限まで引き続き、その親族の貸付事業の用に供していること。

            

 

  

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