2.遺産分割と成年後見

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 1. 相続財産の分割方法 

(2015-11,2015-06,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「遺産分割協議」 

 

l  Point

 

遺産の分割には、指定分割と協議分割(遺産分割協議)がある。遺産分割方法には、現物分割、代償分割、換価分割がある。遺産分割協議がまとまらないときは、調停分割、審判分割となる。

 

 遺産の分割を行うにあたっては、まず財産を確定すること、そして相続人を確定することが必要です。複数の相続人が存在する場合は、遺産をどういうふうに分けるかが問題となります。遺産分割には次の方法があります。 

 

(1) 指定分割と協議分割

 指定分割 

被相続人は、遺言で分割の方法を定め、また分割方法を定めることを第三者に委託することができます。 

遺言による分割方法の指定は、遺産の全部はもちろん、遺産の一部についてだけ行うこともできます。指定の方法は、財産の種類だけを指定してもよいし、個別的な財産をしてもよい。 

 

 協議分割 

共同相続人全員の協議によって分割する方法です。被相続人の遺言による指定がない場合はこの方法によります。ただし、遺言が存在する場合であっても、共同相続人全員の協議により遺言と異なる合意が成立したときには、協議分割が優先します。 

 

(2) 遺産分割協議書 

遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が必要となります。全員の合意により、協議が成立したときは、遺産分割協議書を作成します。書式は特に決まったものはありませんが相続開始後10ヵ月以内に全員の署名および捺印(印鑑登録済みの実印)をし、提出しなければなりません。

 

(3) 遺産分割の方法 

遺産の具体的な分割方法には次の3つの方法があります。 

 現物分割 

遺産をそのままの形で分割する方法で、原則的な方法です。個別財産について、相続する数量、金額、割合を定めて分割します。現物分割ができないときには換価分割や代償分割によることとなります。 

 

 代償分割 

共同相続人の1人または数人が相続により財産の現物を取得し、その現物を取得した者が他の共同相続人に対し債務を負担する分割の方法です。

 

 換価分割 

共同相続人の1人または数人が相続により取得した財産の全部または一部を金銭に換価し、その換価代金を分割する方法です。

 

(4) 調停分割・審判分割 

相続人同士の話し合いで遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所による調停や審判 

で遺産を分割することになります。  

 調停分割 

協議が調わない場合に、調停により分割する方法です。調停の申立を行い、まず話し合いによる解決を目指します。調停を経ずにいきなり審判の申立を行うことも可能ですが、通常は調停が先になります(調停前置き主義)。

 

 審判分割 

調停で話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の審判により分割する方法へと移行します。 

 

 

 

 

2. 遺言の種類 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「自筆証書遺言」「公正証書遺言」 

 

l  Point

 

法的効力を持つ遺言事項とは、身分に関する事項、相続に関する事項、財産の処分に関する事項の3つである。

遺言の作成方法には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がある。

 

遺産相続には、法律の定める基準(法定相続分)や、個々の事情を考慮した決まり事(寄与分、特別受益の持ち戻しなど)があります。しかし、遺産分割の基本はあくまで当事者同士の話し合いによるものです。しかし相続や遺産分割については遺産額の多寡にかかわらずトラブルが絶えず、「争続」と言われたりします。そこでトラブルを避けて遺産を相続させるために必要となってくるのが「遺言」です。 

 

(1) 遺言に必要な事項 

遺言には、法的効力を持つものと、法的効力を持たないものがあります。法的効力を持つ遺言事項とは、身分に関する事項、相続に関する事項、財産の処分に関する事項、の3つとなります。

 

  身分に関する事項 

Ÿ   認知 

Ÿ   未成年者の後見人の指定 

Ÿ   後見監督人の指定  

 

 相続に関する事項 

Ÿ   推定相続人の廃除とその取り消し 

Ÿ   相続分の指定・指定の委託 

Ÿ   遺産分割方法の指定・指定の委託 

Ÿ   遺産分割の禁止 

Ÿ   相続人担保責任の指定 

Ÿ   遺言執行者の指定・指定の委託 

Ÿ   遺留分減殺方法の指定 

Ÿ   特別受益の持ち戻し免除 

Ÿ   祖先の祭祀主催者の指定 

 

 財産の処分に関する事項 

Ÿ   遺贈 

Ÿ   財団法人設立のための寄付行為 

Ÿ   信託の設定 

 

(2) 遺言書の種類  

遺言は、法律で一定の方式が定められています。最も一般的に利用されているのが、自筆証書遺言と公正証書遺言です。このほかに秘密証書遺言があります。 

 自筆証書遺言 

遺言者(被相続人)本人の自筆による遺言です。メリットとしては、簡単に作成できて遺言内容を秘密保持できることです。デメリットは紛失・破棄・改ざんのおそれがあることと、形式や内容の不備で無効および紛争の可能性があります。 

 

 公正証書遺言 

遺言者が口述で内容を伝え、公証人が代筆する遺言です。メリットは、内容が明確で証拠能力が高く、偽造・隠匿の危険がないことです。デメリットは、作成手続が煩雑で費用がかかる、証人の立会いが必要となることです。 

 

 秘密証書遺言 

書面に遺言者が署名押印して、公証人に封書で提出する遺言です。メリットは、遺言の存在を明確にし、内容を秘密にできることと、偽造・変造の危険がない、そして署名押印だけできれば字が書けなくてもよいことです。デメリットは、作成手続が煩雑で、遺言書の内容に公証はないため紛争のおそれあること、証人立会いと検認が必要であるということです。 

 

(3) 遺言の撤回 

遺言者がいったん遺言書を作成しても、撤回したければ自由にいつでも、その全部または一部を撤回することができます。 

遺言の撤回は、先に作成した遺言と同じ方式である必要はなく、たとえば公正証書による遺言を後で自筆証書、秘密証書などの遺言で撤回してもよいことになっています。 

 

 

 

 

3. 遺言書の作成 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 「自筆証書遺言」「公正証書遺言」

 

l  Point

 

遺言が法的に有効であると認められるためには、民法に定められた方式によって作成され

る必要がある。遺言は、書面にすることを前提としているため、ビデオ、カセットテープ、フロッピーディスクなどに残されたものは、遺言として認められていない。

  

実際の遺言書作成のルールとポイントは以下のとおりです。

 

(1) 自筆証書遺言の作成 

自筆証書遺言は、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、これに押印することによって成立するものであり、証人、立会人は不要です。 

 主な事項は、次のとおりです(レジュメの書面参照)。 

 自筆 

遺言書の全文を遺言者が自分の手で書く。様式についての制限はない。 

 用紙・筆記具 

用紙や筆記用具は自由だが、紙に書く。 

 日付 

最も新しい日付が有効とされる。遺言者、遺言執行者の住所も記載する。作成年月日のないものは無効(「平成2610月吉日」は無効)。 

 署名・押印 

氏名の自書がないものは無効(通称は可)。押印は実印でなくてもよい。捺印を忘れると無効となる。 

書式 

横書き、縦書きどちらでも自由だが、遺言であることが分かるように「遺言書」と表題を付けたほうがよい。 

 訂正 

訂正の方法は民法で厳格に決められているので、それに従う。訂正箇所にも捺印が必要。 

 封印、封入 

完成した遺言は、封筒に入れ、封じ目に押印する。 

 その他 

上記以外には次の事項があります。 

イ)   相続させる物件は登記簿どおり記載。土地、建物別に指示。 

ロ)   銀行は支店名、口座番号、名義も書く。 

ハ)   事業を継がせる場合は、株式に関する事項を明確に記載する。 

ニ)   スムーズに相続を進めるために、遺言執行者を指定しておく。 

 

(2) 公正証書遺言書の作成 

公正証書遺言書は、公証人によって作成され、公文書として保管されるので、最も安全で確実な遺言書です。 

 公正証書遺言書の作成の手順は、次のとおりとなっています。 

 遺言書の原案を考える。 

 証人を決める(2人以上)。 

 公証人に依頼し、打ち合わせをする。 

 必要書類を揃える。 

 証人と公証役場へ行き、遺言書を作成する。手順は次のとおり。 

イ)   遺言者が公証人の前で口授する。 

ロ)   公証人が筆記する。 

ハ)   公証人が遺言者と証人の前で読み上げる。 

ニ)   内容確認後、遺言者、証人、公証人が署名・押印する。 

 遺言書の完成 

原本は公証役場に保管し、遺言者に正本が公布される。 

 

(3) 秘密証書遺言 

秘密証書遺言は、遺言したいという事実を明確にしたいが、内容を生前に知られたくない場合に利用されます。作成の手順は、次のとおりとなっています。 

 遺言者または第三者が記述した遺言書に遺言者が署名押印する。 

 遺言書を封じ、同じ印章で封印する。

 証人2人以上の立会いの下、公証人に提出する。 

 公証人の前で本人が自分の遺言書であること、住所氏名を申述する。 

 公証人が遺言者の申述及び日付を封書に記載し、遺言者、証人及び公証人がそれぞれ署名、押印する。

 

 

 

 

4. 遺留分 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「遺留分に関する民法の特例」

  

l  Point

 

遺留分とは、相続人のために留保されるべき相続割合のことで、民法では遺言による不利

益な相続分を守るため、遺留分の制度を定めている。相続により取得した財産が遺留分より少なかった相続人は遺留分減殺請求を行うことができる。

  

 民法では、相続人が相続に当たって不利益を被らないよう、相続割合について留保されるという制度があります。これを遺留分といいます。

 

(1) 遺留分の割合 

遺留分は一定の範囲の相続人に最低限保証された財産の取り分で、被相続人の遺言でもこれを侵害することはできません。遺留分は、基本的に相続人全体の全財産の1/2、相続人が直系尊属(親)のみの場合の遺留分は全財産の1/3となります。 

各相続人の遺留分は、この1/2もしくは1/3を法定相続人分で配分したものとなります。ただし、兄弟姉妹には遺留分がありません。(レジュメ図表の「遺留分の合計」の欄)。 

たとえば配偶者と子2人の遺留分が侵害された場合(つまり、遺留分よりも取り分が少ない場合)遺留分の合計は1/2となります。法定相続分は配偶者が1/2、子がそれぞれ1/41/2×1/2)となりますから、各人の遺留分はその1/2となり、配偶者が1/41/2×1/2)、子が1/81/4×1/2)ずつとなります。 

 

(2) 遺留分減殺請求 

相続により取得した財産が遺留分より少なかった相続人は遺留分を侵害している受遺者、あるいは他の相続人に対して不足分を請求することができます。これを遺留分減殺(げんさい)請求といいます。 

遺留分の減殺請求は、遺留分を侵害されていることを知った日から1年以内に行わなければなりません。何もしないで1年を過ぎると、時効により減殺請求権が消滅してしまいます。 

請求の方法については、特に決まりがありませんが、知らないうちに1年が過ぎてしまわないよう、請求の証拠を残しておくことが必要です。なお、減殺請求権を行使するかしないかは相続人の自由です。 

 

(3) 遺留分の放棄 

遺留分権利者は、被相続人の生前に、遺留分を主張しないという意思表示を行うことができます。これを遺留分の放棄といいます。遺留分を放棄するためには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。

 

(4) 遺留分の対象となる贈与財産 

遺留分算定の基礎となる財産は、被相続人が相続開始の際に有した財産の価額に、以下の贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して算定します。 

 相続開始前1年以内の贈与財産。 

 遺留分を侵すことを双方が承知の上で贈与した財産(1年より前の贈与も対象)。 

 相続人に対する一定の贈与財産(特別受益)。

 

特別受益とは、被相続人が生前に特別な贈与を受けている場合をいいます。たとえば、次のようなものです。 

イ)   婚姻のための贈与(支度金など)。 

ロ)   養子縁組のための贈与(支度金など)。 

ハ)   生計のための資金としての贈与(住宅取得資金など)。

 

 したがって、遺留分の計算の基礎となる財産は、次のとおりです。

 

 遺産+1年以内の生前贈与+特別受益(相続人への生前贈与)-債務

  

 

 

 

5. 法定後見制度 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「法定後見制度」「法定後見制度および任意後見制度等」

 

l  Point

 

成年後見制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」から成り立っている。成年後見人等には資格について法律上の制限はない。法定後見制度は、後見・保佐・補助の3類型の制度が設けられている。

  

(1) 成年後見制度 

成年後見制度とは、認知症や知的障害などのために判断能力や意思能力が不十分な状態にある人を支援し、その権利擁護を図る制度です。成年後見制度は、従前の禁治産・準禁治産制度を大幅に改正した「法定後見制度」と新設の「任意後見制度」から成り立っています。成年後見人等には資格について法律上の制限はありません。

 

(2) 法定後見制度 

法定後見制度は、後見・保佐・補助の3類型の制度が設けられています。現に判断能力が不十分な状態にある人に対して、一定の申立権者からの後見・保佐・補助開始の審判申立てにより、家庭裁判所が成年後見人・保佐人・補助人を選任する制度です。

 

 後見(禁治産の改正) 

精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害等)により事理を弁識する能力(判断能力)を欠く常況にある人を保護対象とする制度です。後見人は財産に関するすべての法律行為について本人を代理し、本人が自ら行った法律行為は取り消すことができます(日常生活に関する行為は除外)。 

 

 保佐(準禁治産の改正) 

精神上の障害により、事理を弁識する能力(判断能力)が著しく不十分な人を保護とする制度です。保佐人には、民法第13条第1項に規定する行為についての同意権・取消権や、当事者が申立てにより選択した「特定の法律行為」についての代理権が付与されます。「自己決定の尊重」の観点から、代理権の付与については本人の申立てまたは同意が要件となります。 

 

l  民法第13条第1項に規定する行為 

・元本の領収または利用 

・借財または保証行為 

・不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為 

・訴訟行為 

・贈与・和解・仲裁合意 

・相続の承認または放棄、遺産分割 

・贈与・遺贈の拒絶、負担付きの贈与・遺贈の承諾 

・新築・改築・増築・大修繕 

・民法602条に規定された期間を超える賃貸借 

 

 補助(新設) 

軽度の精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害・自閉症等)により、事理を弁識する能力(判断能力)が不十分な人を保護対象とする制度です。個別の審判によって当事者が申立てにより選択した「特定の法律行為」についての代理権または同意権・取消権を付与することができます。

 

(3) 審判の申立権者                                              「後見・保佐・補助」の開始の審判の申立ては本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等が行うこととされています。また、老人福祉法、知的障害者福祉法及び精神保健福祉法では、福祉の観点から市町村長(特別区の区長も含む)にも申立権が認められています。 

 

 

 

 

6. 任意後見制度 

(2015-11,2015-06,2014-06,2013-11,2013-06) 出題「任意後見制度」「法定後見制度および任意後見制度等」 

 

l  Point

 

任意後見契約の利用形態には、「移行型」「即効型」「将来型」の3つがある。任意後見を開始する必要が生じた場合は、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てを行う。任意後見監督人が選任された時点から、任意後見契約の効力が発生する。

  

(1) 任意後見契約(レジュメ図表 

任意後見契約とは、本人が自ら選んだ任意後見人に対し、精神上の障害により判断能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護、及び財産の保全・管理等に関する事務の全部または一部について代理権を付与する委任契約です。任意後見契約の方式は公正証書よることが要件となっています。 

 任意後見監督人の選任前の受任者を「任意後見受任者」、選任後の受任者を「任意後見人」といいます。

 

(2) 任意後見契約の利用形態 

任意後見契約の利用形態には、「移行型」「即効型」「将来型」の3つがあります。 

 移行型 

通常の任意代理に委任契約から任意後見契約に移行する場合です。契約締結時から受任者に財産管理等の事務を委託し、自己の判断能力の低下後は公的機関の下で受任者に事務処理を続けてもらう場合の契約形態です。 

 

 即効型 

任意後見契約締結の直後に契約の効力を発生する場合です。契約締結直後に本人または受任者の申立てにより任意後見監督人を選任することにより、当初から任意後見人による保護を受けることが可能です。 

 

 将来型 

十分な判断能力を有する本人が契約締結の時点では受任者に後見事務の委託をせず、将来自己の判断能力が低下した時点で、はじめて任意後見による保護を受けようとする場合の契約形態です。 

 

(3) 任意後見人の職務 

任意後見人の職務は、本人との間で契約する内容によって異なります。例えば、次のものがあります。 

・預貯金の管理・払出し 

・不動産等の重要な財産の処分 

・遺産分割 

・賃貸借契約の締結・解除

・介護契約・施設入所契約・医療契約締結  等 

 

(4) 任意後見監督人の選任の申立て(レジュメ図表② ③ 

任意後見を開始する必要が生じた場合には、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てを行います。申立権者は、本人、配偶者、四親等内の親族、または任意後見受任者となっています。任意後見監督人は任意後見人の配偶者、親、子、兄弟姉妹等はなることができません。 

任意後見監督人が選任された時点から、任意後見契約の効力が発生し、任意後見人が代理権を行使できるようになります。

 

(5) 任意後見監督人の職務(レジュメ図表④ ⑤ 

任意後見監督人は任意後見人の事務を監督し、その事務について家庭裁判所に定期的に報告する義務があります。

 

 

 

 

7. 法定後見制度と任意後見制度 

(2015-11,2015-06,2014-11,2014-06,2013-11,2013-06)  出題「法定後見制度と任意後見制度等」

 

l  Point

 

任意後見契約が登記されている場合には、特に必要があると認める場合を除き、法定後見の開始の審判を行うことができない。任意後見の開始後に特別な必要のための法定後見の審判がなされた場合には、既存の任意後見契約は終了する。

  

(1) 法定後見と任意後見の調整 

任意後見契約が登記されている場合には、任意後見制度を選択した本人の自己決定を尊重し、家庭裁判所は本人の利益のために特に必要があると認める場合を除き、法定後見の開始の審判を行うことができません。 

任意後見の開始後に特別な必要のための法定後見の審判がなされた場合には、既存の任意後見契約は終了します。

 

(2) 任意後見契約の解除 

 任意後見契約は、次のような事由によって解除することができます。 

 任意後見監督人選任前の契約解除 

公証人の認証を受けた書面によることが要件です。 

 任意後見監督人選任後の契約解除 

正当事由と家庭裁判所の許可が要件となります。 

 解任 

 法定後見の開始 

 本人の死亡または破産 

 任意後見人(任意後見受任者)の死亡・破産または任意後見人(任意後見受任者)自身に対する後見の開始 

 

(3) 成年後見登記制度 

成年後見登記制度は、従来の戸籍へ記載する公示方法に代えて、法定後見及び任意後見契約に関する新たな登記制度として創設されたものです。

 

 法定後見の登記 

後見・保佐・補助の審判が行われた場合には、裁判所書記官の嘱託によって法定後見の登記がなされます。法的後見の登記には、後見・保佐・補助の種別や同意権・代理兼の範囲などが記載されます。 

 

 任意後見の登記 

任意後見契約の公正証書を作成すると、公証人の嘱託によって任意後見契約の内容が登記されます。また、任意後見監督人の審判が行われた場合には、裁判所書記官の嘱託によってその旨の登記がされます。 

 

 終了の登記 

法定後見または任意後見が終了したときには、その原因が家庭裁判所による場合には裁判所書記官の嘱託、その他の原因(本人または任意後見人の死亡等)による場合には成年後見人等の申請により、終了の登記を行う必要があります。任意後見人の代理権の消滅は、終了の登記をしなければ第三者に対抗することができません。

 

 

 

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