保険8. 中小法人の保険設計

相談者のプロフィール

会計ソフトを中心に制作販売しているSS会社のY社長はやり手の47歳。事業も順調だが、次期社長にと望んでいる長男(一人息子)はまだ中学1年生であり、従業員(12人)の中には後継者といえる者は育っていない。

相談事例

私はまだ一線でがんばるつもりでいますが、唯一の悩みは私に今、万一の事があったら、後を引継ぐ者がまだいないということです。万一の時のための事業保障をどのように考えたらいいか、そのための資金準備をどのようにしたらよいでしょうか。

FPの回答

経営者が死亡した後の売上減少、債務返済、従業員給与の支払いなど、必要資金(運転資金)についての事業保障資金を、法人で加入する生命保険で準備する対策について考えます。

Ⅰ.
事業保障
経営者死亡後の必要資金を決めます。
1年分を目安とする資金準備・・・1年以内に返済期限が到来する短期債務に見合う返済資金と、従業員の1年間分の給与を支払う資金を前提として必要保障額を決定します。期間を1年以上とするか、1年以下(半年)とするかは会社規模、後継者の有無により判断します。

必要保障額=短期債務 *+従業員の年間給与総額

*注)1年以内に返済期限の到来する短期借入金、買掛金、 支払手形など。

中長期の資金準備・・・後継者が育っていないなどの場合は、中長期の債務と欠損会社になった場合のてん補金を何期分か準備しておく必要があります。

必要保障額=中長期の債務+収入てん補資金


Ⅱ.
保険プランニング
事業保障としての生命保険の種類としては、「資金収支」「含み益(損)」「雑収入(保険差益)」の発生の仕方、また「経営者在任中の保障」「勇退後の保障」など、保険の特徴にあった保険設計が必要です。
保険の特徴・・・ここでは事業保障のための生命保険として、下の二つの保険を検証します。

 

保険の種類

保険料払込中の
資金収支 *①

保険料払込中の
含み損益 *②

雑収入

(保険差益)*③

終身保険

当初マイナス、長期化
により プラスに転化

当初マイナス(含み損)、
長期化によりプラスに転化

経過年数が進むにつれ
雑収入逓減

長期平準
定期保険

加入当初と加入期間
終盤を除きプラス

年々益が増加、加入期間 7
8割目が含み益のピーク

保険期間を通じて相当
額のまとまった雑収入

*①=解約受取額-保険料実質負担累計{(年間保険料 -損金 +益金)×法人税率}
*②
=解約受取額-資産計上額 (払込保険料累計)
*③
=死亡保険金-資産計上額 (払込保険料累計)


保険の設計
終身保険・・・長期化するほど「資金収支」「含み益」が増加(保険差益は逆に減少)していきますので、長期契約を前提とし、保険料払込満了後のオーナー経営者としての退職金準備、生涯保障、相続対策まで見越した保険設計を考えた時メリットがあります。逆に中途解約は、「資金収支」「含み益」でマイナスとなり、デメリットがあります。

長期平準定期保険(4.「法人保険の契約」参照)・・・「含み益」は、前払保険料を取崩す時期(加入期間 6割後)からピークを迎えるので、この時期に役員退職金の支払時期を一致させると多額の損金を「含み益」でカバーできます。
また、毎期支払う保険料の一部または全部が損金になるため、死亡保険金受取時に相当額の「雑収入」(保険差益)となり、この資金で役員退職金および売上減少による減益をカバーできます。
加入数年目から「資金収支」「含み益」「雑収入」の面でメリットがあります。

Ⅲ.
法人の経理処理
法人(SS会社)から個人(Y社長)へ退職金支払い目的で、終身保険を名義変更する際の経理処理(仕訳)を見てみます。
解約時受取相当額を退職金とし、資産計上額(保険料積立額+配当金積立金)を取崩します。各期に支払った保険料は、支払った時点で「保険料積立金」として資産計上されています。借方と貸方の差額が雑収入(または雑損失)となります。
(例)保険料払込累計:3800万円、配当金:250万円、解約時受取額:4200万円

借方

貸方

現金(退職金)

4,200

保険料積立金

3,800

配当金積立金  

250

雑収入   

150


コメント

長期平準定期保険については、すでに(4.「法人保険の契約」)で説明しました。ここでは、終身保険との比較と保険のプランニングをどのように使い分けるかがポイントになってきます。経理処理は簿記の基本的仕訳です。保険料を支払った時の仕訳も覚えておいて下さい。

 

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