投資の運用実績は、商品の資産配分で90%以上が決まってしまうと言われます。個別の商品選びで悩むよりはポートフォリオで運用してみましょう。
下の例は、A夫妻(夫55歳、妻50歳)のケースです。夫婦ともに上場企業勤務で収入に不安はなく、すでに子は独立しており、住宅ローンも返済済みです。しかし老後のことを考えると、このままでいいか・・・。
①現状資産を把握する
A夫妻の現在の資産状況は、すべてが国内の預貯金で1,900万円です。資産配分は国内短期資産100%となります。
現状の資産配分では、今後のリターン予測は0.10%、リスクは0.50%でリスク・リターンの特性は「元本確保型」となります。
②運用目標をつくる
今後の運用目標は、夫が65歳になるまでの10年間で現在資産と合わせて3,500万円にすることです。66歳から83歳までの17年間は、その資産を運用しながら毎年200万円を引き出し、公的年金と退職年金の補完とします。そのためには、毎年160万円(毎月14万円)の積立運用をすることで可能となります。
①長生き寿命を予測
A夫妻は当初、これから10年後の資産目標額を3,500万円としました(黄色の丸い目印)。しかし、それでは夫の退職後20年たたないうちに資金は枯渇してしまうことに気づきました。
そこで長生きする寿命を予測して、夫が退職して20年後の86歳時点で1,000万円の資産残高とすることを新たな目標としました。そのためには今から10年後の目標額は、3,500万円よりも1,000万円多い4,500万円としなければなりません(グラフ)。
②目標額の再設定
新たな目標額達成のために、現状の資産配分で毎年300万円を積立運用します。これは毎月25万円となりますが、夫婦ともに定年後65歳までの雇用が約束されており、再雇用後の収入減やほかのリスク的要因を考えても2人の収入で十分積立可能な金額です。
①資産配分の組直し
現状の資産配分でもA夫妻の目標額は達成できそうですが、高齢となった時の医療や介護のことを考えると、86歳時点での資産残高が1,000万円であっても不安です。
そこで、本人のリスク許容度を診断した上で国内外のリスク資産も組み入れ、新たな資産配分を作り直します。
提案では、リターン2.65%、リスク4.80%となり、リスク・リターン特性は「元本確保型」から「安定型」となります。図の曲線上の各点は最も効率的な運用を目指すことができるリスクとリターンの組合せで、投資する人のリスク許容度に合わせて選択し、その組合せから資産配分を行います。
②リスク許容度診断
リスク許容度診断とは、運用にあたって投資家がどれだけのリスクをとれるか(どれだけの損失に耐えられるか)を診断するものです。上記のモデルポートフォリオは下記のQA式の質問シートを使うツールで作成されます。
・お客さまの年齢
・保有資産残高
・投資割合
・投資するときのリスク資産の割合
・投資期間
・運用に対する考え方(元本の安全性を重視など)
・最良・最悪のケースにおける運用での商品選択
・価格下落時の対応 等
この方式は現在、WEBサイトの自動運用ツールでも行えますし、それによって簡単にポートフォリオをつくることも可能です。しかし、ツールだけでは本人が本当に望む資産配分をおこなえるかは疑問です。
そこで個別面談によるヒアリングが必要になります。ヒアリングでは上記の質問回答を踏まえたうえで、本人のキャッシュフロー分析、資産状況分析をはじめ、ライフプラン上の考え方、希望する今後の生き方や価値観、社会貢献活動、資産の使い方や残し方など、パーソナルファイナンスの全要素を考慮した診断を行います。これにより、上記①で作成したモデルポートフォリオを調整します。
自動運用などの作成ツールだけでは、必ずしもお客様に本当に適したポートフォリオが作成されるとは限らないからです。
①リターンのブレ予測
グラフの赤線は提案前の当初積立額の推移です。太い青線は提案後の資産配分での運用予測で、運用が平均的に推移した場合です。上下の青色の帯は、上線が運用がうまくいったケース、下線が運用がうまくいかなかったケースで、青い帯の部分全体がリターンのブレで、このブレがリスクということになります。
②将来の運用ケース
将来の運用が平均のケース(太い青線)で見ると、10年後の資産額は5,200万円ほどとなります。さらに夫が86歳時点では約3,500万円となり、運用がうまくいったケースでは約5,300万円、運用が最悪となったケースでも約2,000万円となります。
(画面はFPアセット・アロケーションのツールを使用)
提案によるポートフォリオが決まると、次はどのような金融商品を選んだらいいか迷うでしょう。冒頭にも述べましたが、資産運用の効果(運用実績)は資産配分によって90%以上が決まると調査結果でも発表されています。
つまり、個別の商品を選ぶよりはアセットクラス(国内株式など資産カテゴリーのこと)の配分比率の決定が重要であるということです。このアセットクラスを選択するときの指標となるのがインッデクスです。インデックスは、各アセットクラスのリスク・リターン・相関係数および過去の実績を数値で出すために利用している指数です。これらのインッデクスと同じ動きをする投資信託(インッデクスファンド)を資産配分の商品として選択し、運用します。
例えば、国内株式の代表的なインデックスには「TOPIX配当込み指数」があります。国内株式の商品を選択するときは「国内株式インッデクスファンド(TOPIX連動型 )」というような名称のついた投資信託を選択すればいいわけです。外国債券、外国株式なども同様にして選択できます。
インデクスファンドは、ほとんどの金融機関で扱っており、手数料も低いので購入しやすいファンドです。当事務所では、ファンド選択におけるアドバイスをさせていただいています。
※当事務所では個別商品の推奨や販売はしておりません。