誰もが「富まざる者」になる時代 

最低賃金より生活保護を選ぶ

何年か前、将来大幅な赤字が発生した時のライフプラン対策として、「生活保護を受けさせる」というFP講座の受験生の回答を聞いたことがあります。冗談とも本音ともとれる回答に、笑うに笑えず、思わず考えてしまいました。

実際に生活保護を受けるには、それなりに審査があります。働く意思が持てて健康体の人、少しでも貯蓄がある人などはまず、生活保護は受けられる可能性は低いようです。係の人に「保護をあてにする前に、さっさと職を探しなさい」と言われてしまいます。

じつは、今回(9月)の最低賃金法改正で引き合いに出されたのがこの生活保護です。要するに今の最低賃金で働いても生活保護扶助よりも下回るようでは、労働意欲が削がれてしまうということなのです。では、実際にどれくらい賃金が上がるかというと、全国平均で時間給が15円程度、現在の687円(2007年度平均)から700円強となる見込みです。これでもまだ、先進各国に比べ一番低いほうです。
 
ほとんどの人が、自分は生活保護や最低賃金なんて関係ないと思っていることでしょう(確かに、関係ないほうがいいかもしれません)。年収が平均並み、いやそれ以上なら、定年まであるいは定年後も今の生活が維持できる・・・と。

「富める者」から「富まざる者」へ

かつて(つい最近まで?)アメリカは、「富める者は、より富める者に」の時代でした。今は「富める者も、それなりに富まざる者に」なりつつあるようです。つまり、お金が多く入れば、それなりにお金を多く出してしまう(使ってしまう)ということです。入った分だけ出してしまうから、お金が貯まらない。しかも、一度レベルを上げた消費や生活は下げることが出来ないという哀しい人間の性(さが)があります。こうして、中流所得以上の生活破綻者が珍しくなくなっているとのことです。さらにサブプライム・ショック後は、家を手放し、車を手放し、職を失い、「富める者も富まざる者も、より富まざる者に」、という恐ろしい現実になりつつあります。これは、アメリカのことだけとは到底思えません。

もうひとつの盲点が、「今が同じであれば、先も同じ」、多くの人がこの考え方から抜け出せないでいることです。どういうことかと言うと、たとえばサラリーマンが現役で年収700万円もらっているとします。定年までは最低限、今の収入が保証され、定年後には再雇用制度や再就職で働いても、やはりそれと同じレベルの給料がもらえる、という「幻想」です。

 

退職者の「働き学」

日本人の平均的な男子の賃金構造は、50歳代前半を頂点に55歳から下がり始め、50歳代前半から50歳代後半への昇給率(じつは降給率)はマイナス7%前後、50歳代後半から60歳代前半への昇給率(降給率)はマイナス30%前後となっています。現在の日本人は、8割の人が経済的不安から老後も働かざるを得ない状況にあります。そこで、老後の働き方がいくつか挙げられています。一つは、雇用延長や再雇用制度で正社員として働く人。二つ目は、パートに近い形で非正規社員や業務受託という形で働く人。最後は、個人で独立する人。

今の日本の雇用では、再雇用で正規社員で働くにしても定年前後で減給されます。定年後もパートなど非正規社員で働く人は、時給雇用が多くなるでしょう。定年退職時に老後の貯蓄がほとんどない人は、それ以降はその日の生活が成り立てばいいというわけにはいきません。働けるのは、せいぜい65歳まで、健康状態や雇用状況に恵まれたとしても70歳までが限度でしょう。となると、70歳から平均余命の82(男性)までの12年間(場合によっては、90歳以降も生きてしまうという「生きるリスク」に晒されてしまう)の生活費を、60歳から70歳までの間に稼がなければならないという現実が待っています。

健康であれば90歳まで働くか?

ここで気になるのは、もらえる年金の額です。厚生年金の受給額は加入期間と収入によって変わってきます。在職老齢年金については、ここでは詳細を省きますが、報酬と年金の合計が一定額を超えると超える割合によって厚生年金が減額されていきます(基礎年金は満額受給)。

また、65歳以降も年金をもらわずに働く場合、年金の受給時期を70歳まで遅らせて、繰下げした分の割り増し年金をもらったほうが得だと思う人がいるでしょう。
65歳から70歳までもらうべき年金を我慢してもらわずに働くのだから、その間の年金は減らされないだろう」
ということです。ところが、実際は働きながら年金をもらおうがもらうまいが、厚生年金に加入している以上は在職老齢年金が適用されます。計算上で減額された年金額をもとに割り増しされた額が、後ろの年齢に繰り下げられるだけです。もっとも、年金が減らされても給料と合算すればそれなりの収入になるわけですから、これはこれで良しとしなければなりません。

働けるうちはまだいいほうです。少しきついかもしれませんが、健康で、かつ働く場さえあれば、非正規社員で80歳、90歳でも働くことは可能です。ただし、60歳を過ぎていくほど、よほどの知識や技術(それに体力!)がない限り賃金は低くなっていくと覚悟したほうがいいでしょう。

これからのリタイアメントプランは、60歳からどのように働くか、何歳まで働くか、あるいはどれだけの賃金で働けるか、それに見合うだけの技量をいつまでに身に付けておくか、こうしたことを在職中に決めておくことが重要なテーマとなってくるでしょう。

(2008-11-22)

 

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