分かりにくい金融商品の広告をどう読み解くか

 最近増えた円定期預金の広告

円定期預金の金利が良くなっています。つい何年か前までは金利が0.01%で、100万円を1年預けても100円しか利子が付かず、引き出し手数料のほうが高くついて元本割れしてしまうくらいでした。それが、この間までネット系では1%を超える金利も珍しくなくなりました。ネット系以外の銀行でもキャンペーン金利などで高めの金利が付いています。

これ自体は喜ばしいことですが、問題はこうした金融商品の広告です。真剣に身構えて読まないとどういう仕組みなのか分かりにくいし、じっくり読めば読むほど分からなくなってきます。実際に一般の人は分かるのでしょうか。「金利にプラス□%の上乗せ」という謳い文句だけで誘われると、どうなるか・・・。

今回は詳しく説明しませんが、中には「仕組み預金」もあり、預金と言いながら、市場金利によっては元金を割ってしまうものもあります。金融破綻で悪者扱いされているデリバティヴ(プットオプション)を仕組んだもので、償還条項に満期日を金融機関側で決めることができると定めてあるので注意が必要です。(デリバティヴそのものが悪いのではありません。)

ここでは、そういう金融工学を使ったものではない定期預金を見ています。A大手銀行の最近の新聞広告を見ると、退職時期に合わせて退職金運用向けのサポートプランが載っています。5段(新聞1頁のほぼ3分の1)のスペースに一目見ただけで、気持ちが悪くなるほど細かい数字でびっしり文章が書かれています。

まず、預けるお金は、「退職金でなければだめです」ということです。わざわざ、退職金が振り込まれた口座の預金通帳や退職所得の源泉徴収票など、「確かにあなたが退職金をもらったという証拠となるものを持ってきてください」と、まるで税務署か何か、役所の手続きみたいに書かれています。要するに、既設口座からの振り替え預けでなく、新規でそれだけの大口なら、いい扱いをしてあげますよ、ということでしょう。

読みづらくてわかりにくい広告

問題は、預けるだけのメリットがあるかどうかです。1回通しで読み回しても、複雑な説明が多くてよくわかりません(私の頭が悪いのか、広告を書いた人が優秀なのか)―。預ける金額や期間によっていくつかプランがありますが、仕組みはほとんど同じです。あるプランでは退職金を預けるうちの50%以内を6ヵ月の円定期預金にする、その6ヵ月間は店頭表示金利にプラスして年3.5%(税引後年2.8%、6ヵ月だからこの半分)を上乗せするというプランです。同時に残りの50%以上は3年間の定期預金に預け入れることになる。この分は、店頭表示金利になります。

50
%以内の6ヵ月円定期は自動更新されますが、自動更新後は店頭表示金利になり、6ヵ月の満期前に中途解約すると、中途解約利率がかかって受取利息が0円になることもある、とあります。ただ、こうした留意すべき点は、長くてたくさんある文章の中に埋もれて、なかなか見つかりません。ほかにも、びっしり説明文句や注意書きなども丁寧に書かれていますが、一般の人がとても読む気にはなれないでしょう(私は仕事柄、細かく読みますが最後まで読むにはけっこう意志が要ります)。

このプランが悪い商品というわけではありません。仕組み預金ではないので、中途解約しなければ元金保証で、預金保険制度対象にもなっています。6ヵ月分の円定期の利息は少し魅力ですが、恩恵は6ヵ月のみです。それに、退職金の残り50%以上を3年定期預金に預けるのなら、ほかに有利な金利があれば、わざわざ6ヵ月定期と3年定期に振り分ける必要もなく、退職金全額まとめてそちらの商品にしてもいいのではないでしょうか。

大口定期の店頭表示金利を見ると、6ヵ月では年利0.17%、3年では0.35%となっていますから、総額で比較してみると、退職金1000万円なら3年定期の金利がだいたい0.45%以上なら、いっぺんにそちらの商品に預けたほうが得になります。逆に0.45%以下なら、A銀行のプランが得になります。退職後の生活費として、6ヵ月後すぐに引き落として使う予定があるなら、このA銀行のプランで、6ヵ月定期の満期分は使いようがあるかもしれません。

このレベルの金融商品について、こと細かく書かれてあるのは、A銀行というより、金融商品取引法上の広告表示の規制があるからなのでしょう。必要なことはすべて書けという親切細かい説明はありがたくはありますが、無理して分かりにくい広告を出すほどなのか、逆効果のようにしか思えません。


(2009.02.08)

 

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